Kinectを活用した障害者向け活動支援ソリューション「OAK」、東大先端研と日本MSが共同開発:ICTのチカラで「できる」ことを増やす(1/2 ページ)
東京大学 先端科学技術研究センターと日本マイクロソフトは、脳性まひや脊髄性筋萎縮症などを抱える重度障害者の活動を支援するソリューション「OAK - Observation and Access with Kinect -」を共同開発。「Kinect for Windows センサー」を応用することで実現した。
誕生日――。ケーキにともされたキャンドルの炎を、目をキラキラと輝かせながら一息に吹き消す。おそらく、誰でも一度は経験したことのあるごくありふれた光景であり、幸せな誕生日のイメージを象徴するシーンである。
本当にそうだろうか。全ての人が平等に、同じように、キャンドルの炎を吹き消し、祝福されるこの瞬間を体験することができるのだろうか。以下のイラストを見てほしい。幸いにして生まれながらに健康で大きなケガもなく人生を送っている人にとっての「普通」や「当たり前」がそうでない状況の人もいる。イラスト手前の車イスに乗った子どもは、自分の誕生日を祝ってもらっているが、重度の障害があるため自分の力でキャンドルの炎を吹き消すことができない。彼は心の中でこうつぶやいている。「ぼくの誕生日なのに……」。
例えば、脳性まひや脊髄性筋萎縮症などの重度障害を抱える人にとって、意思を表すことや能動的な活動をすることは、非常に困難を極める。先のイラストと同じように、息を大きく吸い込んで一気にキャンドルの炎を吹き消すことも難しい。
こうした障害者の活動を支援するソリューションを東京大学 先端科学技術研究センター(以下、東大先端研)と日本マイクロソフトは、共同で開発した。重度障害者向け活動支援ソリューション「OAK - Observation and Access with Kinect -」である。マイクロソフトのモーションセンサーデバイス「Kinect for Windows センサー」を応用したソリューションで、搭載するRGBカメラや3次元深度センサーなどにより、障害者がわずかに示す意思表示(例えば、腕や指先/上半身の動き、顔の表情など)を読み取り、活動を支援するものだ。以降、2012年10月3日に開催された記者発表会の内容を踏まえて、同ソリューションの概要を紹介したい。
従来、わずかに動く指先や舌で物理的なプッシュスイッチを押すなどして意思表示を行うケースがあるが、スイッチを身に付けていなければならない点や、そもそも何に対しての反応なのかを読み取ることが難しいという課題がある。さらに、こうした活動支援は一般的に、高価なハードウェアやソフトウェアが必要であるため、個人はもちろんのこと、学校・職場などに広く普及させることは難しい。そのため、最近の世界的なトレンドは、“身近にあるテクノロジー(アルテク)”を活用・応用する方向にあるという。
そこで、東大先端研 人間支援工学分野 教授の中邑賢龍氏が率いるチームは、「安価で手に入り、自分の所有するPCに簡単に接続して利用できる『Kinect for Windows センサー』に着目。従来の課題を解決するデバイスとしてこれを応用し、障害者の活動支援を行うソリューションの開発を開始した」(中邑氏)という。
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