SolidWorksで、樹脂流動解析も可能に!:コマ大戦も参戦! ソリッドワークス・ジャパンの新製品発表
ソリッドワークス・ジャパンのミッドレンジ3次元CADシステムの最新バージョン「SolidWorks 2013」には、2次元製図機能の向上、コスティング(コスト計算)機能の強化に加えて、樹脂流動解析ツールも追加された。「全日本製造業コマ大戦」に参戦した「Team SolidWorks」の取り組みも紹介した。
ソリッドワークス・ジャパンは2012年9月27日、ミッドレンジ3次元CADシステムの最新バージョン「SolidWorks 2013(以下、2013)」を発表した。今回のバージョンアップでは、2次元製図機能の向上、コスティング(コスト計算)機能の強化を図った。さらにSolidWorks製品群に、樹脂流動解析ツール「SolidWorks Plastics」を追加。これらの他、同社のビュワー「eDrawings」をiPadに対応させたことも発表した。
SolidWorks Placticsは、SolidWorksのオペレーションの延長上で樹脂流動解析を実行可能にするオプションツールだ。製品設計者向けの「Plastics Professional(充てん解析)」、樹脂流動解析の上級者向けの「Plastics Premium(充てん+保圧)」に分かれる。
Plastics Professionalで解析可能な項目は、以下の通り。金型設計に深く携わらない製品設計者にとっては十分な機能だ。メッシュは、サーフェスとソリッドに対応する。
- 充填
- ウェルドライン
- ショートショット
- 空気だまり(エアトラップ)
- マルチゲート
金型設計者、射出成型技術者など高度な樹脂流動解析が必要な場合には、Plastics Premiumが望ましい。それで解析可能なのは、以下の通りだ。
- マルチキャビティ
- ランナー最適化
- 冷却時間
- ヒケやヒケマーク
- インサート成型やオーバーモールド
- ガスアシスト&バルブゲート
- コ・インジェクション(サンドイッチ法)
- ファイバー(繊維)と複屈折
材料データは、4000種類以上備えているとのことだ。「家電や自動車で、プラスチック部品の比率が増加傾向である中、ユーザーから樹脂流動解析機能への要望が挙がっていた」とソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長 大古俊輔氏は説明した。
図面機能について
「2次元から3次元のCADに移行する顧客が増えるに従い、製図機能に対する細かな要望も増えている。それが製品の機能強化にも反映されている」(大古氏)。
2013の2次元製図では、断面図の機能強化を図った。従来は、断面線をスケッチしてから、断面図を作成した。今回は、断面表示したい境界にかかわる箇所(穴の中心や、形状の端など)を次々と選択することで製図できる。また、円弧形状の「整列断面図」作成を補助する機能も追加した。
同社のデモによれば、前バージョンの「SolidWorks 2012(以下、2012)」で1分39秒かかっていた作業が、2013では28秒で済むとのことだ。デモで実施した操作は、下記の通り。
SolidWorks 2012
- スケッチ線を作成
- 拘束の追加
- 断面図を作成(左側)
- 投影図を作成
- スケッチ線を作成
- 部分断面を作成(右側)
SolidWorks 2013
- 新断面ツールを使用
- 断面図、半断面図
他にも、以下のスライドのように、製図に役立つさまざまな機能を追加した。
2012から追加したコスティング機能については、旋盤加工計算を可能とした他、溶接部品などにも対応した。
2013と2012との相互運用性についても確保。従来、下位のバージョンにファイルを渡す際は中間ファイルに変換するしかなかったが、今回は2013で作ったデータをネイティブファイルのままで、2012に渡すことが可能だ。2012から2013にバージョンアップした後も、引き続きデータが利用できる。
ビジネスについて
ライセンス数は全世界で200万目前(日本国内は、現時点で約13万5000ライセンス)。「早ければ2012年中、遅くとも2013年1月に米国で開催予定の『SolidWorks World』までに達成できるのではないか」と大古氏は述べた。2009年3月に100万ライセンス(全世界)を超えた後、3年半で倍に伸ばした。「西ヨーロッパ、北米、日本ではCADはもう珍しいものではないが、全世界で見れば、CADユーザーの人口が増えている。アジアはもちろん、最近は特に東ヨーロッパで数が伸びている国が多い」(大古氏)。
コミュニティーと共に
「ソリッドワークスのβテストでユニークな点は、テストをコンテストとして実施し、ユーザーを表彰していること。日本におけるβテストも、米国本社からR&D部門のトップが来日し、その場にいるユーザーたちに対し、ソフトウェアを操作しながら使い方を説明している。また、その場でユーザーの要望を聞いていくようにしている」(大古氏)。これまでソリッドワークスでは、ユーザーの声に耳を傾ける活動に力を入れてきた。
またソリッドワークス・ジャパンのスタッフたちは、都内や地方のユーザーとの交流を積極的に図っている。同社が主催するユーザー向けイベントも、一方的に製品情報を伝えるだけではなく、ユーザー討論会形式にするなど、展開をユーザーにゆだねるスタイルにシフトしてきている。
「顧客や市場、コミュニティーの声に耳を傾けないITベンダーはないと思うが、ソリッドワークスは行動を持って実践している。ユーザー、代理店、パートナー、記者、教育現場、全てがコミュニティー。それと共に成長していくことに投資する。社員がそこに参加して協力させていただくのもその一環だ」(大古氏)。
また被災地での教育支援、学生フォーミュラ大会に出場する学生のサポート活動も、同社スタッフの自発的なボランティア活動として実施している。大古氏自身も、同社の社長に就任して以来、毎年開催される学生フォーミュラ大会を見学している。
中小製造業が主体となって開催するモノづくりイベント「全日本製造業コマ大戦」に、同社のスタッフが「Team SolidWorks」として参戦するのも、その活動の一環でもある。
コマの設計と解析はソリッドワークス・ジャパンのエンジニアが行い、その製作にはSolidWorksのユーザーグループ「SWCN」(SolidWorks Club of Nagano)のメンバーであるNK精工の代表取締役 小林宏章氏が当たった。
2012年9月30日に八王子市で開催した関東大会では、残念ながら予選敗退となってしまったが、次回以降の活躍に期待したい。
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