SoCを分離すると顧客の期待に応えられない、3つの製品分野一体の強みを生かす:車載半導体 ルネサス インタビュー(2/3 ページ)
厳しい事業環境にある、半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス。しかし、中核に位置する車載半導体事業の実力は、世界でもトップクラスだ。同社で車載半導体製品のマーケティング戦略を統括する金子博昭氏に、製品開発の方向性や、強みを生かすための施策について聞いた。
車載システムは制御系と情報系が融合
MONOist ここからは車載SoCについて伺います。現在、ルネサスのSoC事業は、富士通セミコンダクターやパナソニックのSoC事業との統合など、さまざまな報道が取り沙汰されています。これらの報道をどう考えていますか。
金子氏 私自身は、事業売却などを決める立場にないので、そのときの決定に従う他はありません。ただし、ルネサスの車載半導体事業から車載SoCを分離した場合、自動車メーカーや電装部品メーカーといった現在のわれわれの顧客から、当社に掛けていただいている期待に応えられなくなるだろうということだけは言えます。
かなり昔であれば、車載マイコンは制御系システムで、車載SoCは情報系システムで使用するといったように、事業を切り分けることが可能だったでしょう。しかし今では、自動車の車載システムの中で、走る、曲がる、止まるといった機能を実現する制御系システムと、カーナビゲーションなどに代表される情報系システムは融合が進みつつあります。もはや切り分けは不可能なのです。
代表的なのが、メーターと予防安全システムです。メーターはディスプレイメーターのように高度なグラフィックを表示するため、車載SoCを使用する場合があります。予防安全システムは、レーダーやカメラからの膨大なセンサー情報を処理するために、やはり車載SoCが必要になることもあるのです。
また、車載システム間の連携が広がる中で、マイコンとSoCの連携によってISO 26262への準拠を実現する必要も出てくるでしょう。当社が車載マイコンと車載SoCを分離してしまうと、それを実現するのは極めて難しくなります。
何より顧客に役立つ製品を開発するためにも、車載マイコンと車載SoC、両方の技術情報を共有しておく必要があるはずです。
MONOist 現在、ルネサスの車載SoCは、2社の合併に併せて発表した「R-Car」が中核になっています。R-Carでは、アプリケーションプロセッサコアを、ARMの「Cortex-A9」に置き換えましたが、事業展開に影響はありましたか。
金子氏 R-Carの市場投入によってシェア数値は落としていません。しかし、同様にARMコアを搭載した製品を展開している競合他社との競争は激化しています。
他社との差異化で重要なのは、顧客がソフトウェアを開発する際にどれだけ有効なエコシステムを提供できるかです。現在、ルネサスでは欧州市場や北米市場でツールベンダーと連携して、開発支援環境を充実させています。最近は、車載情報機器に用いるOSの選択肢として、Microsoft以外にも、QNX、Linux、T-Kernelなどが一定のユーザー数を確保するようになっているので、これらもしっかりサポートしなければなりません。
MONOist 次世代R-Carはどのような製品にする計画ですか。
金子氏 Cortex-A9よりもさらに高性能な「Cortex-A15」を採用します。ハイエンド品では、伝送速度1Gビット/秒の車載イーサネットに対応するコントローラを搭載する予定です。量産時期は2015年になるでしょう。
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