業界団体が3次元CAD設計環境導入支援へ、クラウドで環境を共有:PLMニュース
世代交代を機に3次元CAD設計環境の導入を急ぎたい中小型造船業界を支援すべく、JSTRAが実証実験を開始する。複数企業で環境を共有して導入効果を検証するという。
日本船舶技術研究会(JSTRA)は、日本の中小型造船会社の設計力向上を支援する目的で、3次元CAD設計環境の共同利用に関する実証実験を2012年9月7日から開始する。
中小型造船会社の多くでは、2次元CADが使われている。解析やシミュレーションといった3次元CAD設計環境では一般的になりつつある品質向上のための取り組みが進んでいない。
一方で、3次元CAD環境の導入は、ライセンス費用が高価であることや熟練の設計者に新たにスキル習得を求めることになるなど、導入には幾つかの障壁がある。
JSTRAでは、こうした個々の造船会社が共通して抱える課題の解決策として、まず3次元CAD設計環境に手軽に触れ、学習できる環境を提供する。
3次元設計環境の提供では、ワークステーションとソフトウェアライセンスを貸与する方法も考えられるが、コスト面での負担が大きい。このため、「仮想デスクトップ」による設計環境を選択した。
仮想デスクトップは、ごく簡単にいうとサーバ上に複数の仮想的な端末を構築し、利用者がインターネット回線などを経由してサーバー上の仮想端末の画面を操作する仕組みだ。ユーザー側は、インターネットに接続できるPCが用意できればどこからでもアクセスできる(図参照)。また、利用者の環境をJSTRA側で集約することで、サポートも一元的に行える利点がある。
仮想デスクトップ環境は、幾つかの企業が提供しているが、JSTRAでは富士通が開発・提供している「エンジニアリングクラウド」を採用している。一般的な仮想デスクトップ環境では、精細な3次元図面を頻繁に動作させるには、遅延が大きくなりやすいが、エンジニアリングクラウドには、3次元CAD図面のような精細な描画が必要なデータを高速で伝送できる利点がある。
実証実験は2013年3月末まで実施する。3次元CAD設計環境を採用することで設計リードタイムや品質、コスト削減効果がどれくらいあるかを検証する。今回の実証実験では造船用3次元CADツールとしてNupas-Cadmaticを採用している。
関連記事
- 踊る解析最前線(6):造船業のCAD&CAE活用、ただいま進化中!
基本設計で作った3次元モデルを設計工程で活用するモチベーションがなかなか上がらない……。なので、少し発想を変えて、CAEに着目! - モノづくり支援環境はこう変わった! 各社のトレンドを歩く
2012年6月に開催した第23回 設計・製造ソリューション展に見た業界トレンドをレポートする。今回は業務プロセス改革や、最新IT技術を駆使した展示を中心に見ていこう。 - 富士通が東北のモノづくり産業復興に向けた環境を提供
富士通ら4者が東北で「ものづくり基盤強化コンソーシアム」を設立。震災からの復興に向けた環境作りを支援、災害に強いモノづくり環境の実証実験を始める。実証実験期間(2012年3月〜2013年3月)中は無償で利用できる。対象は中堅・中小製造業。 - シンクライアントで設計・開発が可能に:富士通、独自の画像軽量化技術で“エンジニアリングクラウド”提供へ
富士通もついにPLMクラウドへ。仮想クライアントと画像軽量化技術を組み合わせ、情報の一元化、垂直立ち上げやサプライチェーンへの広がりも視野に入れた、同社技術の部門横断的な展開に注目したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.