「実際にモノを作る」ためのIT:DMS2012を歩く(4)(1/2 ページ)
お待たせ! DMS2012レポートの最終回。今回の話題は、生産ライン周りの話題やCAMなどをお届けする。
第23回 設計・製造ソリューション展(DMS2012:2012年6月20〜22日開催)レポートの続きをすぐに書くはずが、7月後半にかけて仕事関係で追われまくり、今になってしまいました……。レポートするには少し遅いのかもしれませんが、そこで得た情報そのものの価値は薄れてはいません。ということで最終回をようやくお届けします。
このシリーズ「DMS2012を歩く」は「3次元プリンタ」という「データを形にするもの」やCAEやCADなどのソフトウェアについてレポートしてきました。今回は、ソフトウェアはソフトウェアでも、「再びデータをリアルにする」あたりを話題にしていきます。
それはつまり、何かといえば「実際にモノを作る(加工する)」という部分に関わる製品です。
デジタル・ファクトリー
1つ目は、いわゆる「デジタル・ファクトリー」的なソフトウェアです。
設計された部品は当然、加工して、組み立てなければなりません。で、「モノを組み立てる場所は、どこか」と言えば、もちろん工場です。
前回紹介したクリエイティブ・マシンのブースでは、工場における生産ラインのシミュレーションを実施するソフトウェア「3D Create」(Visual Components:フィンランド)などを展示していました。生産ラインシミュレーションについては、他にも同様の製品が存在しますが、3次元データの活用という面では、一番伸びしろのある分野かもしれません。
単刀直入に「類似製品と比較したときの強みは何ですか?」とお聞きし、返ってきた答えは「軽い、早い、安い!」。いくら「素晴らしい!」といっても、これでは「何が」「どのように」良いのかが、よく伝わりませんね。なので、少し説明しましょう。
なぜ、生産ラインのシミュレーションをするのか。それは、リアルな生産ラインを組み立てる前に、工場内の物流やロボットなどの挙動をバーチャルにシミュレーションすることで、“本番”の生産ラインを無駄なく立ち上げ、可能な限りスムーズに稼働させるためです。
生産ラインは、構想段階であっても、既存のものであってもビジュアル化できます。さらに、工場における物流と、ロボットのシミュレーションが同時に実行できるため、実際の工場にかなり近い状態でシミュレーションが可能だということですね。
従来、実際に動かしてみなければ分からなかったことが、3次元データを活用することで、あらかじめバーチャルでシミュレーション可能となることに意味があります。
ここで、気になったことが1つあります。それは「データの作り込みが面倒ではないのかな?」ということでした。しかしそこに対しては、きちんと仕組みが用意されていました。
既存の3次元CADモデルに対し、ロボットや作業者、コンベアなどの動作の他、シミュレーションのためのコンポーネントも定義可能です。同ソフトウェアのインタフェースは、40種類以上のCADフォーマットに対応し、データを直接読み込めるとのことです。
さて「工場内の動き全体をシミュレートする」ということであると、ロボットなどの動きも本番同様にシミュレーションする必要が出てきますね。そこで必要となるのが、「本物と同様に、バーチャルなロボットを動かすこと」です。そのため、オプションとしてPLCが接続可能な他、三菱電機のプログラミング&エンジニアリング支援ソフトウェア「RT ToolBox2」、川崎重工業のオンラインプログラミングツール「K-ROSET」、デンソーウェーブのオンラインプログラミング・ソフトウェア「WINCAPS III」などのインタフェースが用意されています。
このことで、画面の中にあるバーチャルな生産ライン上に配備された各社のロボットに対して、生産ラインの動作に合わせた実プログラムの検証が可能なのです。つまり、このバーチャルなライン上で動くプログラムは、本物のロボットでも動くということですね。つまり、このバーチャルなライン上で動くプログラムは、本物のロボットでも動くということですね。バーチャルな世界とリアルな世界が別にあるのではなくて、プログラムを通じて「現実の場の再現」というレベルでのシミュレーションが可能になるのです。
CAMの進化系
さて「作る」ということでは、CAMの世界もありますね。CADなどで作成した形状データは、最終的には部品として加工しなければなりませんから。
今回は、5軸加工で定評のあるオープン・マインド・テクノロジーズ(OPEN MIND Technologies:オープン・マインド)で、最新バージョンである「hyperMILL 2011」のお話を聞きました。CADと同様に、CAMも今や“すごく驚くような”機能が登場するわけでもなく、やはり“もっと便利に”“もっと使いやすく”といった方向での改良・改善が中心でした。CAMでいえば、「どんなに複雑な形状でも、プログラミングを単純にできる」「複雑な工程においても、自動化などの活用で作業を楽にできる」ということですね。
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