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タグチメソッドで人を作る、技術を育てる雑談・品質工学 長谷部先生との対話(2)(3/3 ページ)

品質のことばかりに目がいきがちなタグチメソッド。正しく失敗するには? 技術を高めるには? 長谷部先生に平易にひも解いていただいた。

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長谷部先生はどうやって学んだ?

――これから学びたい人たちのために、先生自身はどのように勉強してきたのか教えてください。

長谷部 私は入社して10年ぐらいたったころに、タグチメソッドの教育を1回受けましたが、そのときは正直言って、良さも悪さも分からなかった。50歳になって開発の第一線からしりぞいて、全社の技術開発の体制とか教育の仕事になったときに、もう一度勉強したんです。そうしたら、若いころに教育を受けたときの理解とは全然違うことに気がついて、これはすごい! と。

 最初に教育を受けたときも、直交表は使えそうだなという感覚はありましたね。だから、いま情報収集している人たちもそんな感じかもしれません。直交表に興味を示す人は結構いるんですが、私が「そこじゃないよ」って言うと、変な顔をするんですね。私自身もあらためて勉強してみて、初めて直交表じゃないところに目が行った。それは、自分が開発現場でいろいろ苦労して、どうやったら効率が良くなるか、品質を良くできるかと悩んだり、課題を持っていた経験があったからだと思いますね。

――社内でタグチメソッドを展開するためのポイントはありますか。

長谷部 タグチメソッドは、表面的なツールの話じゃなくて、技術の体質を良くしていく、教育をしていく、自分がクリエイターとして成長していくという話までリンクしなければいけない。要するに、個人の話じゃなくて、マネジメントの話なんです。だからマネジャーがタグチメソッドの本質を理解してくれればうまくいきます。私の場合は、ある意味で運が良かったんですね。当時の部長クラスの何人かに話をしたときに、琴線に触れる人がいて、面白そうだからやってみようと言って、人をアサインしてくれた。自分の組織で課題を感じていて、何かやり方はないかなと悩んでいるマネジャーにぶつかるとうまくいくんですよ。そうじゃなくて「あ、それ直交表だろ」っていう感じだとダメ。無理してやっても、通り一遍のことだけで、うまくいかなかったからやめるという話になっちゃう。成功するかどうかは、マネジャーの意気込み、感覚によるところが大きいと思いますよ。「のどが渇いているか」どうかっていうことですね。人をアサインして具体的な話になったら、皆さんものどが渇いているでしょっていう話から始める。そこまでを共有することがまず重要です。

方法論は経験者の視点を取り込みながら会得せよ

――最初は戸惑うこともあると思うのですが、どこかで相談することはできますか。

長谷部 まず、タグチメソッドは手段ですから、手段の前に目的をちゃんと考えないといけないですよね。目的のためには、タグチメソッドだけが手段ではないので、何をしたいのか、何をしなければならないのかを、一回突き放して考えるところから始めるといいと思います。

 それでタグチメソッドを使うのなら、知っている人に手ほどきをお願いしたほうが間違いが少ないでしょう。品質工学会には全国に相談員という制度があるので、HPを見てみてください。タグチメソッドが手段として適しているか迷うようなら、その段階から相談するのもいいと思います。実際指導に行ってみると、1回訪問して最初に議論をするだけで指導が終わりになる場合もありますよ。会社の中で視野が狭くなっていて、どうにも整理できないようなときにも有効なんでしょうね。ユーザーの立場から見るという考え方だから、設計者側から見ていると分からなかったことも、見えてくることがあります。それだけでも役立ちますよね。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 長谷部先生との2時間にわたるインタビューでは、最終的には技術力のある人材こそが競争優位の源泉であることに気付かされました。技術力向上のためにどう正しく失敗するべきかを考えるきっかけにしていただけると幸いです。

長谷部先生略歴

のっぽ技研
長谷部 光雄(はせべ みつお)
品質工学会会員、日本信頼性学会会員

株式会社リコーで技術開発センター所長を歴任後、技師長および顧問として同社のグループ会社全体を対象に品質工学の指導と推進を担当。
主な著書に『ベーシックタグチメソッド』(日本能率協会マネジメントセンター、2005年)、『技術にも品質がある』(日本規格協会、2006年)、『品質力の磨き方』(PHP研究所、2008年)など多数。



筆者紹介

杉本恭子(すぎもと きょうこ)

東京都大田区出身。

短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。


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