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モノづくり支援環境はこう変わった! 各社のトレンドを歩くDMS2012レポート(1)(3/3 ページ)

2012年6月に開催した第23回 設計・製造ソリューション展に見た業界トレンドをレポートする。今回は業務プロセス改革や、最新IT技術を駆使した展示を中心に見ていこう。

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高速画像処理にもGPUパワーを

 最近ではコンピュータリソースのうちでも、CPUだけでなくGPUの処理能力も利用しようという取り組みが盛んになっている。語弊を恐れずに端的にいうと、CPUは、さまざまな計算をそつなくこなすタイプだとすればGPUは力技を得意とする。CPUが多くの処理をソフトウェア的に処理できるのに対して、GPUは単純な計算の繰返しをハードウェアで高速に処理できる。つまり、単純な演算を並列で大量に処理できる。3次元データの描画や物理シミュレーションのような大量の類似した計算を行う場合、CPUだけで計算するよりも高いパフォーマンスを得られるのが特徴だ。

 現在、GPGPUの領域でもっとも普及しているのがNVIDIAが提供する自社ハードウェア向けのGPGPU用ライブラリ「CUDA」を利用する方法だろう。

 一般にはコンピュータゲームのような高い描画能力を必要とする場面で用いられることが多いが、実のところこの処理能力は、仮想モノづくり環境や、画像認識技術を使った品質検査の高度化などに有効なものだ。

 最近ではコンピュータ仮想化技術においても、一部でGPUの仮想化に対応した製品が出てきていることもあり(関連記事)、作業環境のクラウド/SaaS化と併せてGPUリソースの活用を視野に入れた導入も増えつつあるようだ。


画像を使った検査も高速・大量に処理できるようになる。

 写真は電子部品の検査を行っている様子。品質検査などの場面での、カメラや画像認識ソフトウェアを使った開発が進んでいることから、画像処理速度を高めたいというニーズが増えているという。この例では1つの部品を複数の断面で計測し、形状のバラツキなどを確認している。

 「GPUを使って画像処理を行うことで、従来の検査よりも一度に多数の画像を処理できる。検査精度を高められるので、製造装置メーカーからの引き合いが増えている」(説明員)という。

 菱洋エレクトロはNVIDIA製品の国内一次代理店である。同社ブースでは、自社開発のソフトウェアのGPGPUプログラム化支援サービスを展示していた。

 科学計算向けのソフトウェアはFortranやCなどのプログラム言語を前提に、企業や研究機関ごとに代々受け継がれているライブラリやソフトウェアプログラムを資産として保有していることも少なくない。こうしたプログラムは並列演算やGPU演算を意識していない場合がほとんどだ。

 これらの資産を、現在のコンピュータ性能をフルに使って高速化しようとする場合、前述のCUDAライブラリに移植するなどの、プログラムの置き換えが必要となる。

 CUDA化には学習コストが発生するため、菱洋エレクトロでは既存ソフトウェアのCUDA化を代行するサービスも展開している。移植時にはソースコードの提供が必須となっている。「必要に応じてNDAなどの契約を交わす場合もある」(説明員)という。


CUDA化ポーティングサービスは、CUDA学習コストをかけず、自社資産を高速化できるサービス

構造計画研究所のブースデモも、GPUと並列処理を活用した高速化についてのレクチャがあった

使いにくい「過去トラ」をデータマイニング技術で意味のある情報に

 富士通ブースの中で紹介されていたRiskmining Navigatorは、過去トラブルデータベースの活用を目的とした製品だ。

 過去に関連記事で紹介した、デンソーの本田氏が取り組んでいたFMEA辞書のような高度な仕組みまでを実現するのは、非常に骨が折れる作業といえる。本田氏の取り組みは、同社の技術向上に大きく寄与するものとして高く評価されているが、全ての企業に本田氏のような活動ができるスキルのある人材がいるわけではない。

 「各社とも過去トラブルの情報蓄積は行っています。しかし、それらを体系的にうまく活用できているかというと、実際はそうではないことがほとんどで、職人的なデータ管理者が個人活動としてデータ整備している場合が少なくない」(ブース説明員)という。

 同製品は、トラブル情報をデータマイニング技術を使って可視化、トラブル発生パターンを分析してモデル化する製品。直観的に情報把握がしやすくなり、関連性が高いと判定されている情報をくまなく確認できる。


Riskmining Navigatorの機能イメージ(資料提供:富士通)

◇ ◇ ◇

 次回は、エンジニアリングチェーンの周辺領域を中心に紹介していく。

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