変化する“DMS的”業界地図と3Dプリンタ動向:DMS2012を歩く(1)(3/3 ページ)
2012年6月に開催した第23回 設計・製造ソリューション展に見た業界トレンド考察と、3次元プリンタ関連ブースの動向について取り上げる。
動く! 面白製品事例
今年、MSYSで展示されたuPrintなどの出力サンプルで、私が特に気になったのは「実際に動く製品」でした。
1つは杉浦機械設計事務所が開発している、滑らかなモーション変化を実現した「腕付きトルソロボット」でした。
こちらのロボットのパーツの開発に、MSYSのオンデマンド生産サービスが活用されました。
もう1つが、いよいよセルシスから予約受付が始まった人型入力デバイス「QUMARION(クーマリオン)」。
3D-GANの会員企業がチームを組んで開発にあたったということもあり、事務所に来てくださった方の中には、これをご覧になった方もいらっしゃると思いますが、このパーツの試作でもuPrintがフルに活躍していました。昨年に試作機ができて以来、YouTubeに公開された動画などを通じ、海外でも話題になりました。
スリーディー・システムズ
スリーディー・システムズがDMSで展示した新製品のデスクトップ3次元プリンタ「Projet1500」は、いよいよ日本国内でも発売ということです。Projet1500は、現行機である「V-Flash」の後継機に当たります。
Projetシリーズには、「Projet1000」「Projet1500」の2機種があります。違いは、主に「使用できる材料の色が1種類か、複数選択できるのか」ということです。方式はV-Flashと同様(FTI:フィルム転写イメージ造形法)です。V-Flashと比較して出力の速度は倍になっていて、より高速な造形が可能なようです。ちなみに筐体の形状は、個人的には「V-Flashよりも格好よくなった」と思っています。
後継機ということでは、同社のデスクトップ3次元プリンタ「Projet HD3000」(以下、HD3000)の後継機種である「HD3500 plus」も展示されていました。こちらは既存の微細造形能力を維持しつつ、タッチパネルによる操作性や材料の供給効率を高めることでランニングコストを下げることが可能になっています。
私見ですが、現在の3次元プリンタは、メーカーや機種を問わず、「ランニングコストには、必ずしも満足できるレベルではない」ということもあるようですから、このようなコスト低減の改良は、地味ではありますが、非常に重要なことではないでしょうか。ちなみに、「HD3500 plus」も「HD3000」とは、筐体のデザインが違います。
今回のまとめ
今回は、DMS全体についてと、「一番賑わっていた」と私的に判断した3次元プリンタ周辺について書きました。業界内で一番注目を集めているのは、やはり「低価格機」のようです。その方向で一番進んだのが、ストラタシスのMojoです。もともと低価格機として、キットも含めて開発されたものではなく、「高価格の機種を低価格にそのまま下ろした」ようなものです。なので、「品質を考えたとき、最も低価格な機種」といえるのではないでしょうか。
スリーディー・システムズとオブジェットは、従来のデスクトップ型機種の改善および増強をしていました。この流れは、しばらく続くでしょう。このことについてはオブジェットのインタビューでも訊ねてみました。同社としては、もちろんその流れは肯定していたものの、別の流れについても話がありました。
1つは同社のハイエンド機種のみが持っていた機能が、ミッドレンジ機種にも組み込まれていくということ。そして、さらに高機能も追求していくだろうということです。つまり、技術の限界をもっと押し広げていくということですね。
3次元プリンタの場合、「ユーザーのニーズをもっと満たすためには、新たな材料の開発が鍵」と私は解釈しています。これは「プリンタそのもの機能をどのように拡張していくか」という話でもあります。
「3次元プリンタのバーティカル化」(既存機種をベースにある特定の分野や業界向けにソリューションを展開する)という方向性もあるようです。つまり、「どのような用途にも、ご自由にどうぞ」といった、事務機器的な展開とは逆の展開です。ここでの一番大きなポイントも、材料のラインアップではないかと水野は考えます。
さて、来年の今頃は、3次元プリンタの業界にどのような変化が起きているでしょうか? とかく動きの早い時代ですから、いまから楽しみですね。
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次回の「DMS2012を歩く」は、CADやCAEなどソフトウェア業界の動きをレポートします。
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