リチウムイオン電池のコストを大幅に削減可能、日本ガイシが新型乾燥炉を開発:赤外線の選択的照射で乾かします
日本ガイシは、リチウムイオン電池の電極やセパレータに塗布した溶液を、従来比で半分以下の時間で乾燥できる「波長制御乾燥システム」を開発したと発表した。リチウムイオン電池の製造コストを大幅に削減できる可能性がある。
日本ガイシは2012年6月27日、フィルムや箔に塗布した溶液を乾燥炉で乾燥させるのに要する時間を従来比で半分以下に短縮するとともに、エネルギー効率も大幅に高められる「波長制御乾燥システム」を開発したと発表した。リチウムイオン電池やキャパシタの製造工程に適用すれば、製造コストを大幅に低減できる可能性がある。現在、同社顧客がリチウムイオン電池の電極板の乾燥工程に適用を進めており、間もなく量産ラインの稼働を始める予定。
今回発表した波長制御乾燥システムは、塗布された溶液中の溶剤の蒸発に有効な特定の波長の赤外線を選択的に照射する。照射したエネルギーが直接的に溶剤の蒸発に使われるため、熱風やヒーターを使う従来の手法と比べて乾燥に要する時間を従来比で50〜70%削減できる。乾燥炉のエネルギー消費量も同30〜50%低減可能。さらに、乾燥炉の長さを同50〜70%短くできるので、設置スペースの大幅な削減にも貢献できる。従来の乾燥炉と同じスペースに同システムを用いた乾燥炉を複数設置すれば、生産能力を同2〜3倍に高められる。
この他、乾燥炉内を100℃以下に保つ低温乾燥を行えるので、発火の恐れのある溶剤や熱に弱いPETフィルムなどの乾燥にも利用可能である。
従来、フィルムや箔などに塗布された溶液を乾燥炉で乾かす手法としては、熱風やヒーターが用いられていた。熱風の場合、乾燥時間が長い上に、膨大な加熱エネルギーが必要になるため、エネルギー効率が低いという問題があった。一方、近赤外線ランプヒーターや遠赤外線ヒーターの場合、ヒーター本体を高温にする必要があるため、発火の恐れのある溶剤や、熱に弱い樹脂系のフィルムの乾燥には向いていなかった。
日本ガイシは、この波長制御乾燥システムを、リチウムイオン電池やキャパシタの電極板やセパレータの他に、薄型ディスプレイのフィルムやシートの乾燥工程にも適用を拡大する方針。加えて、印刷技術を応用して電子回路などを製造するプリンテッド・エレクトロニクス分野に展開していく計画である。同システムの売上高目標は、3年後の2015年に30億円、5年後の2017年に100億円となっている。
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