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充電規格争いでEV普及に冷や水を浴びせない、互換性確保の道を探る電気自動車(3/3 ページ)

日本発の「CHAdeMO(チャデモ)」と、米独の大手自動車メーカーが推進する「Combined Charging System(コンボ)」が争っている電気自動車(EV)の充電規格。EVの普及に影響を与えないように、両規格の互換性を確保することはできないのだろうか。

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いかにして互換性を確保するか

 CHAdeMOとコンボの規格争いは、市場が立ち上がり始めたEVの普及に冷や水を浴びせることになりかねない。2012年5月22日に開かれたCHAdeMO協議会第2回総会後の会見では、同協議会の会長を務める日産自動車COO(最高執行責任者)の志賀俊之氏が、規格争いを避けて、CHAdeMOとコンボの技術互換性を確保する方針を明らかにした。

 元々のCHAdeMO協議会の方向性も、CHAdeMOを日本発の世界標準規格にすることよりも、EVの普及を促進するためにEV用急速充電器の市場導入を加速させることに重点が置かれていた。同協議会の事務局代表である姉川尚史氏へのインタビューでも、「CHAdeMO協議会の参加企業は、いくつもの実証実験において、さまざまな失敗を経験した。世界の各地域でEVの普及を図る上で、同じ失敗を繰り返すべきではない。そのためにCHAdeMOを提案しているのであって、日本企業に有利になることを期待してのものではない」とコメントしている(関連記事2)。

 では、どうすればCHAdeMOとコンボの互換性を実現できるのだろうか。

 まず、急速充電器に、CHAdeMO用とコンボ用、両方の急速充電コネクタを持つケーブルを搭載するという対応が考えられる。CHAdeMOであれ、コンボであれ、急速充電器に内蔵するAC-DCコンバータを使って3相交流電流を直流電流に変換することに変わりはない。コンボが対応する直流給電についても、AC-DCコンバータの回路を流用してDC-DCコンバータとして動作させることが可能だ。つまり、互換性を確保する上で、急速充電器の電力変換器の設計を大幅に変更する必要はない。

 また、両規格とも、急速充電ケーブルを流れる電流は直流である。つまり、ケーブルも共用できる可能性が高い。急速充電コネクタも、利用者の安全性確保の問題をクリアできるのであれば、変換コネクタを使うという手法で互換性を確保することも検討対象になるだろう。

 互換性を確保する上で最大のハードルになるのは、EVと急速充電器間の通信に用いるネットワークの違いだろう。CHAdeMOは、自動車に広く採用されているCAN(Controller Area Network)を使っているが、コンボは電力線通信(PLC)を採用している。つまり、CHAdeMOとコンボの互換性を実現するには、急速充電器、もしくはEVの急速充電システムが、CANとPLC、両方のネットワークに対応している必要があるわけだ。

 例えば、住友電気工業が、「人とくるまのテクノロジー展2012」で展示していた車載PLCユニットを使えば、EV側でも互換性を確保できる可能性がある。同ユニットは、普通充電スタンドの充電制御や利用料の課金管理を行えるようにするために設計されたものだが、CHAdeMOとコンボの規格争いによって、応用範囲が広がったといえるだろう。

住友電気工業が「人とくるまのテクノロジー展2012」で展示した車載PLCユニット
住友電気工業が「人とくるまのテクノロジー展2012」で展示した車載PLCユニット。左側にある充電コネクタと車載充電器の間に配置されている。(クリックで拡大)

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