充電規格争いでEV普及に冷や水を浴びせない、互換性確保の道を探る:電気自動車(2/3 ページ)
日本発の「CHAdeMO(チャデモ)」と、米独の大手自動車メーカーが推進する「Combined Charging System(コンボ)」が争っている電気自動車(EV)の充電規格。EVの普及に影響を与えないように、両規格の互換性を確保することはできないのだろうか。
一長一短のCHAdeMOとコンボ
CHAdeMOの普及に対して、海外の自動車メーカーの反応は一様ではない。まず、日産自動車とアライアンスを結ぶRenault(ルノー)や、三菱自動車からEVのOEM供給を受けるPSA Peugeot Citroen(PSAグループ)といったフランスの自動車メーカーは、CHAdeMOの採用に前向きだと言われている。
一方、CHAdeMOへの対抗意識を鮮明にしているのが、米国とドイツの自動車メーカーである。Ford Motor(フォード)、General Motors(GM)、Chrysler(クライスラー)、BMW、Daimler(ダイムラー)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)の8社は2012年5月3日、普通充電と急速充電の両方を1個の充電コネクタで行える「Combined Charging System(コンボ)」の規格策定で協力すると発表した(関連記事1)。これまで、フォード主導の米国メーカーと、BMW主導のドイツメーカーの間で折り合いのつかない状況が長く続いていたものの、ついに一体となって活動を本格化させる。また中国は、CHAdeMOでもコンボでもない独自の急速充電規格を策定しているという。
コンボの正式な発表により、日本のCHAdeMOと米独のコンボによる急速充電規格争いが本格的に始まるという見方が多い。欧米の大手自動車メーカーがコンボの規格策定に参加していることから、「CHAdeMOは、携帯電話の通信規格と同様にガラパゴス化する」といった意見も目立つ。ただしCHAdeMOとコンボには、それぞれ長所と短所が存在するので、一概にCHAdeMOが不利というわけでもなさそうだ。
CHAdeMOの長所は、長期間に渡って数多くの実証実験を積み重ねていることや、採用実績、運用実績の豊富さである。短所としては、家庭用電源を使った普通充電は、急速充電と別に用意したコネクタを使用しなければならない点が挙げられる。
一方のコンボは、普通充電と急速充電の両方を1個の充電コネクタで行えることが最大の長所となっている。CHAdeMOとは違って、普通充電と急速充電のコネクタを1つにまとめられるので、部品コストやメンテナンスコストを低減できるという。ただし、コンボはやっと規格の方向性が固まった段階であるため、運用実績はほぼ存在しない。コンボに準拠する急速充電器の市場導入は2012年後半からで、対応EVの市場投入も2013年中となっている。また、普通充電と急速充電の両方に対応するために、コネクタが大きくなって、形状も複雑になるので、利用者の使いやすさやコネクタの剛性はCHAdeMOよりも低くなってしまう。
また充電時の最大出力がCHAdeMOは50kWであるのに対して、コンボはその2倍近い90kWに規定されている。さらにコンボは、次世代の電力供給方式として検討されている直流給電にも対応している。表1にCHAdeMOとコンボの違いをまとめた。
規格名 | CHAdeMO(チャデモ) | Combined Charging System(コンボ) |
---|---|---|
充電方式 | 急速充電のみ対応 | 普通充電と急速充電の両方に対応 |
参加企業 | 日産自動車、三菱自動車、トヨタ自動車など日本の自動車メーカー、PSAグループ、東京電力 | フォード、GM、クライスラー、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ |
充電器の設置台数 | 世界で1393台 | 現時点で0台(2012年後半から導入開始) |
EVと急速充電器間の通信ネットワーク | CAN | PLC |
最大出力 | 50kW | 90kW |
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