VWはモジュール化だけじゃない、車載システムの“民主化”にも取り組む:ESEC2012基調講演リポート(1/2 ページ)
フォルクスワーゲン(VW)で車載電子システム開発部門のトップを務めるVolkmar Tanneberger氏が「ESEC2012」の基調講演に登壇。同社における車載電子システムの開発指針として、注目を集めている「モジュール化」の他にも、「民主化」というキーワードが飛び出した。
「第15回 組込みシステム開発技術展(ESEC2012)」の基調講演に、Volkswagen(フォルクスワーゲン)で車載電子システムを開発している電子電装開発部門の専務を務めるVolkmar Tanneberger氏が登壇した。Tanneberger氏は、同社の電子電装開発部門の事業戦略として、「モジュール化」、「イノベーションによる差別化」、「民主化」、「グローバル開発」、「標準化」という5つの指針を挙げた。
フォルクスワーゲンは、2018年にフォルクスワーゲンブランドだけで年間乗用車生産台数を660万台まで伸ばすとともに、投資利益率(ROI)で21%まで引き上げるという事業目標を掲げている。Tanneberger氏は「この事業目標を達成するには、フォルクスワーゲンは世界で最も革新的な量産ブランドになる必要がある。電子電装開発部門の事業戦略の5つの指針は、その具体策になる」と語る。
モジュール化については、1990年代から適用を始めたプラットフォーム戦略から、モジュール戦略、モジュラー・マトリックス戦略と段階を経て進化してきたという。最初のプラットフォーム戦略は、各車両クラスに1つのプラットフォームを導入するというものだ。次のモジュール戦略では、車載情報機器や運転支援システムを“モジュール”として部品化し、各プラットフォームに適用できるようにした。そして、間もなく導入が始まるモジュラー・マトリックス戦略では、車載情報機器や運転支援システムで先行したモジュール化を他の自動車部品や車載電子システムにも広げることで、プラットフォームに依存しない車両設計が可能になる。
モジュラー・マトリックスは、開発中の小型車「up!」などに適用する「NSF」、フォルクスワーゲンブランドの中核となるA0セグメントからCセグメントまでをカバーする「MQB」、Audi(アウディ)ブランド向けの「MLB」、Porsche(ポルシェ)ブランド向けの「MSB」に分けられている。「フォルクスワーゲンブランドでは、『Golf』の新モデルからMQBの適用を始める。モジュラー・マトリックス戦略では、自動車部品の50%をモジュール化できると考えている」(Tanneberger氏)という。
車載情報機器についても、モジュラー・マトリックス戦略を取り入れた「MIB」を導入する。ナビゲーションやエンターテインメント機能をつかさどる中核の制御ユニットは「モジュラー・メインフレーム」として共通化する一方で、入力インタフェースやHMI(Human Machine Interface)はブランドに合わせて変更する。例えば入力インタフェースは、低価格が特徴のSkoda(シュコダ)ブランドとフォルクスワーゲンブランドはタッチパネルだが、アウディブランドはロータリープッシュボタンコントローラを使用する(関連記事1)。
イノベーションによる差別化については、他社との違いを際立たせる独自技術を取り上げた。最初に紹介したのが、先述したMIBのHMIである。Tanneberger氏は、「顧客との接点となるHMIは、電子電装開発のコアコンピタンスであり、自社で開発している」と強調する。また、電気自動車の二次電池システムについても、電池セルや電池モジュールの開発はサプライヤに任せる一方で、顧客の利便性と直結する二次電池の充放電を管理するソフトウェアについてはフォルクスワーゲンが開発を主導しているという。この他、足の動きだけで荷室のドアを開けられるジェスチャーコントロールシステムや、超音波センサーを使った駐車支援システムなど、世界初の機能を紹介した。
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