抱きしめ、相手の鼓動を感じながら耳元で対話できる、存在感伝達メディア「ハグビー」:人間の存在を伝達する研究
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、遠隔地にいる相手の存在を強く感じながら対話することができる存在感伝達メディア「ハグビー」を開発した。声と振動のみの情報伝達でありながら、人らしい存在感を伝達するための必要最小限の要素を具現化した画期的な通信用メディアだという。
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は2012年4月26日、遠隔地にいる相手の存在を強く感じながら対話することができる存在感伝達メディア「ハグビー」を開発したことを発表した。同製品の名称、“ハグビー(Hugvie)”の由来は、Hug(英語で「抱く」の意味)+vie(フランス語で「Life」の意味)の造語で、「命を抱く」という意味が込められているとのこと。
同製品は、抱きかかえた状態で対話する“抱き枕型”の通信メディアである。本体はビーズクッションでできており、その形状は同社の遠隔操作ロボット「テレノイド R1」や「エルフォイド P1」と同様に人の存在感を効果的に伝える形を採用している。頭部に当たる部分にはポケットとマイクが付いており、そこに携帯電話機もしくはスピーカーフォンを挿入することで抱きしめながら対話することができる。また、同製品の中心部分(内部)にはマイコンとバッテリー、バイブレータ(振動モータ)を備えており、対話相手の鼓動を再現した振動を発生させ、生物らしさや人の感情などを効果的に伝える機能を実現する(相手の声の大きさに同調して、鼓動の振動が強くなる)。
<参考図> 上段左:ハグビー外観、上段中央:携帯電話機を頭部のポケットに入れている様子、上段右:ハグビーを使って対話している様子、下段左:ハグビー内部概要、下段右:声とバイブレーションで相手の状態を伝えるイメージ図。全長70cm、重量600g(バイブレータなし)、表面素材は伸縮性生地、内部素材は発泡マイクロビーズである(※出典:国際電気通信基礎技術研究所)
ビーズクッションの心地よい感触/相手を抱きしめている感覚、抱きかかえた状態で耳元から聞こえてくる相手の声、その声に同調して伝わる鼓動を再現した振動によって、相手の存在を強く感じることができ、相手への親近感が強まるとする。「声と振動のみの情報伝達でありながら、人らしい存在感を伝達するための必要最小限の要素を具現化した画期的な通信用メディアだ」(同社)という。
同社は今後、存在感を伝えるのにより効果的なバイブレーションについての研究開発を進める方針だ。さらに、触覚センサーなどを用いて、話者の状態を計測し、音声がなくてもバイブレーションなどで存在感を伝えるメディアへと発展させ、存在感伝達の究極形の実現を目指すとする。現在、バイブレータなしバージョンの販売を予定している(バイブレータありバージョンについては検討中とのこと)。
なお、同製品の開発は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST) 研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」における研究課題「人の存在を伝達する携帯型遠隔操作アンドロイドの研究開発」の一環として行われた。
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