SマネジャーとO本部長、悩みは解決するのか!?:S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント(5)(1/3 ページ)
部門間のコミュニケーション不全、無意味な会議体に悩まされてきた2人。皆さんにも思い当たるところがあるのでは? 本格的な業務プロセス変革の前に、今回はストーリーを整理しておこう。
この連載について
本連載はS&OP-Japan研究会(主幹:松原恭司郎)のメンバーによる生々しい実体験を基にしたフィクションです。S&OP-Japan研究会は、日本におけるS&OP普及を目的とした非営利のグループです。企業内で日夜数字やお金、予算と計画の間の隔たりを解消すべく、S&OPプロセスの学習と実践を行っています。
この物語は……
限りなく一般に起こり得る状況をイメージしながらS&OP-Japan研究会メンバーが創作した100%フィクションの物語です。特定の個人・企業・団体に関係するものではありません。
前回までのあらすじ
第1回では、Sマネジャーが生産現場リーダーの立場から、生販調整会議のムダに悩み、S&OPというキーワードにたどり着きました(記事参照)。その話を営業部門のトップであるO統括部長に相談したところ、ちょうど同窓会でそのキーワードを友人であるP氏から聞いたところだったことを思い出した(記事参照)。早速連絡を取り、2人はP氏の勤め先にヒアリングに行くチャンスを得た(記事参照。ヒアリング先である製薬大手「OKメディカル社」におけるS&OPプロセス導入の状況を見ていくと、超優良企業の過去は、意外にも親近感の湧くものだった。ヒアリングした2人は同社が危機感を持って取り組んだ改革は、意外にも「普通の活動」を普通に実践するためのものだったことに気付いたのだった(記事参照)。今回はこのストーリーを基に、S&OPプロセスの専門家である松原恭司郎(本稿主筆)が解説する。
S&OP-Japan研究会と本連載について
あらためて、本連載の執筆陣をご紹介することにしましょう。本連載の執筆は「S&OP-Japan研究会」(主幹:松原恭司郎)のメンバーによるものです。同研究会は、2009年暮れに発足し、S&OPを導入しているグローバル製造業の日本法人、S&OPに関心を持つ日本のグローバル製造業、S&OPソリューションを提供しているIT企業などに所属するメンバー(現在15人)から構成されるS&OPに関する情報交流と学習の場です。
本連載は、2部構成となっています。これまでの第1回から第4回までの第1部「S&OPプロセス導入 本音とヒント」では、S&OPがどのような課題に有効か、S&OPがどのようなものかを分かりやすくご紹介してきました。執筆は、実際に現場でS&OPプロセスに携わっているメンバーが中心となっています。グローバル化など変化の激しい経営環境の中で、製造業が抱えるマネジメントならびに現場の重要課題について、なるべく身近に感じていただけるようにストーリー形式でご紹介しました。
次回(第6回)からお届けする第2部では、ビジネスに関連する幾つかのトピックスを取り上げていく予定です。
主要登場人物の相関関係を整理すると……
本連載第1部(第1回から第4回まで)で掲載したストーリーをおさらいする意味で、登場した人物の相関図を図1に示します。
SマネジャーとO本部長は、自らの組織が抱える課題を解決するヒントを求めて、Osさんの米国大学の同窓生である米国人Pさんが勤務する外資系の医療関連会社「OKメディカル」を訪れました。そこで2人は、同社がS&OPを導入することになった背景と導入の効果などについて話を聞き、自らの組織でもその導入を企画・構想するというストーリーになっていました。
ストーリーの背後にある製造業に共通する課題
物語では、Sさん、Oさんという2人の異なる部門のリーダーがそれぞれの悩みを語っています。
生産計画グループマネジャーである「Sさんの悩み」:横の統合
業務レベルでの需給調整活動の代表格である製販調整会議にまつわる課題であり、バリューチェーンの機能の連携・統合、つまり「横の統合」についてでした。
営業事業統括本部長の「Oさんの悩み」:縦の統合
戦略レベルの事業計画と業務レベルの製販調整の連携・統合にまつわる課題であり、戦略と業務の連携・統合、つまり「縦の統合」についてでした。
これは、今日の製造業のマネジメントのキーワードである「戦略」と「統合」に関する課題です。
横の統合
- 計画と実行が部分最適優先で、全体最適が計られていない
- 需給のミスマッチが発生し、低い顧客納期達成率とともに過剰在庫が発生している
縦の統合
- 戦略が実行されない
- 戦略は変化の激しい現状を反映したものになっていない
そして、この2つの課題の解決に効果があると期待されているソリューションが、S&OPプロセスというわけなのです(図2参照)。
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