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もはやSFではない“サイボーグ”技術人工網膜/人工内耳の最新研究事例から学ぶ(1/4 ページ)

米国の人気SFテレビドラマ「600万ドルの男」や「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」の主人公達のように、人体の機能を電子機器によって代替する、いわゆる“サイボーグ”技術の実用化が進んでいる。本稿では、人工網膜と人工内耳に関する米国の最新研究事例を紹介するとともに、それらに活用されている電子技術について解説する。

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原動力は電子技術の驚異的な進歩

 1970年代に米国で放映された人気SFテレビドラマ「The Six Million Dollar Man(邦題:600万ドルの男)」と「The Bionic Woman(邦題:地上最強の美女バイオニック・ジェミー)」では、人体の一部を“サイボーグ”化した主人公が活躍していた。約40年前にSFでしかなかった、人体の機能を電子機器によって代替するサイボーグ技術は、今や現実のものになりつつある。

 この原動力となっているのが電子技術の驚異的な進歩である。特に、センサーと、これらのセンサーを低出力/低速の無線通信で接続するWBAN(Wireless Body Area Network:人体通信網)の進化は目覚ましいものがある。例えば、STMicroelectronicsは2011年に、生体信号モニターや、同社のMEMSセンサーを組み込んだ慣性計測モジュール「iNEMO」をWBANで接続して運用する、初歩的なサイボーグ技術を発表している(図1)。さらに、IEEE(米国電気電子学会)は2012年3月、802.15部会で検討していたWBANをIEEE 802.15.6として正式に承認している。

図1 STMicroelectronicsのサイボーグ技術
図1 STMicroelectronicsのサイボーグ技術 健康管理用にMEMSセンサーやWBANを利用したシステムを開発した。(クリックで拡大)

 とはいえ、先述したテレビドラマのような、腕力や脚力を何十倍に強化するような技術はまだSFの枠内にある。現在、実用化の観点で最も注目されているのは、目や耳に障害を持つ人々に視力や聴力を与える人工網膜と人工内耳である。

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