日本の顧客と密接に交流して、ソフトウェア品質を高める:PTCが製品開発顧客検証QAセンターを開設
PTCジャパンは製品開発顧客検証QAセンターを設置。米PTCのグローバル開発チームの人員を日本国内に配置して、顧客との交流をより密にしつつ、製品導入をサポートする。顧客からもデータ提供を受け、ソフトウェア品質も高めていく。
PTCジャパンは、製品開発顧客検証QAセンター(以下、本記事では「日本QAセンター」とする)を開設すると発表した。同センターは、東京都新宿区のPTCジャパン内に設置。米PTCのグローバル開発チームの人員を日本国内に配置するという取り組みだ。PTCの日本法人が2012年3月で20周年を迎えたタイミングで、日本顧客のサポートを強化しようという活動の一環だという。この取り組みでは、顧客やユーザー会の協力も仰ぐことになるという。
QA(Quality assurance):品質保証
2012年3月14日に開催した記者説明会では、この取り組みについて、米PTC 開発部 製品開発顧客検証QAセンター担当副社長 マイケル・ソープ(Michael Thorpe)氏が説明した。同氏は、日本QAセンターの構想、設立、企画立案を推進。ソープ氏は日本語が堪能であり、30分にわたるスピーチおよび質疑応答は全て日本語で行われた。
「『Time to Value』(価値が出るまでの時間)を縮めていくことは、どこのソフトウェアベンダーでもチャレンジしていること。今回は、われわれの顧客のTime to Valueを短縮するための1つの取り組みである」(ソープ氏)。
同社の日本QAセンターの役割として、同社は、以下の3つの主なポイントを掲げる。
- バージョンアップのサポート
- 製品の導入および定着化計画のサポート
- より良いソフトウェア品質の実現
「PTCの開発チームと顧客と共同で、バージョンアップの効率化を図る。両者が密に付き合うことで、バージョンアップにかかわる時間や工数を減らしていけると考える」(ソープ氏)。
製品のバージョンアップにまつわるさまざまな活動・計画について、顧客特有の状況まで含めて、同社開発チームが具体的に把握するようにし、社内のQAプログラムに反映させていくという。顧客の製品導入や展開の際には、計画段階からサポートしていくという。
「例えば、最新バージョンを公開する前、顧客にα版もしくはβ版を見てもらい、対話することで、『顧客にとって、製品の利点は何か』を早期に理解してもらう。それによって計画や導入やフェーズを短縮できる、つまりTime to Valueを短縮できると考える」(ソープ氏)。
従来は、標準的なパターンに基づいたテストや、顧客が提供可能なデータの一部をベースにしてテストをしてきたという。今後は、顧客の現場に積極的に入り、“実際の使われ方”をもっと密に定義していくという。そこで定めたテストケースは、同社のグローバルなQA活動に反映していくということだ。
「抽象的な表現になるが、要するに、“最新のソフトウェアが提供する価値”をより早い段階で、よりスムーズに顧客が利用できるようにするというのが日本QAセンターの最終目的である」(ソープ氏)。
この日本QAセンターの取り組みは、PTC主導の活動だけではなく、例えばPTCのパートナー企業が「ある特別なテストを実施したい」あるいは「テスト環境での機能検証」などの要望に対しても生かしていくという。「パートナー企業に日本QAセンターを利用してもらうことで、弊社の開発センターの技術者たちともっと密にコミュニケーションをしあえるだろう」(ソープ氏)。
ユーザーの課題
「ユーザーのソフトウェアに対する期待がますます大きくなってきている。われわれがそれに対して、どこまで介入するか、どう分析するかという課題があった。さまざまな要因が絡み、アップグレードという活動は、ますます複雑になってきている。つまり、そこでコストがますます掛かってしまう」(ソープ氏)。
ソフトウェアライフサイクル管理について、同社の顧客の抱える課題としては、主に以下のようなものが挙げられるという。
- 頻繁なバージョンアップ:コストや工数の負荷が大きい
- 導入および定着の課題:新製品導入やバージョンアップ、新機能の展開、ユーザーのトレーニングなどの問題
- ソフトウェア品質に対する日本顧客の期待値の大きさ
同社の日本QAセンターは、上記の課題に対して取り組んでいくということだ。
日本のユーザーは、ソフトウェア品質に対する目が特に厳しいといわれる。同社の日本QAセンターでは、日本の顧客が対面する問題や不具合を効率よく洗い出していく手段を講じるということだ。
日本とPTCワールドワイドとのギャップを埋める
「(この発表会から)3カ月ぐらい前、いろいろな日本のソフトウェアベンダーで、QAやR&Dセンターにかかわる方々と議論する機会があった。そこで、いろいろなアドバイスをもらった」(ソープ氏)。
その中で、特に取り上げたいのは、「日本QAセンターは、ソフトウェアベンダーの開発部隊の一部としてあるべき」ということだとソープ氏は述べた。
「ソフトウェアベンダーの開発プロセスの中に(日本のQAセンターが)入り込んで、そこでプロセスの一部として存在するべきだと考える。そうすることで、グローバルなQAのノウハウや蓄積、リソースを(日本におけるQA活動に)生かせるようになる」(ソープ氏)。
日本QAセンターでは、日本人のエンジニアを雇い、日本の顧客が持つノウハウや考え方を定義し、それをテストケースに反映していく。さらに、そのテストケースをインドやアメリカのQAセンターにも流し、そこでテストを自動化するという仕組みになるということだ。
「要するに、日本の顧客とPTCワールドワイドのギャップを縮小したいという考えである」(ソープ氏)。
テストの手段について
日本におけるQAテストプログラムとしては、以下の3つとなる。
- 特定顧客オンサイトテスト:特定顧客の現場で実施するテスト
- 特定顧客社内テスト:提供された顧客のデータを、PTCジャパンの設備で実施する
- 特定バージョン社内テスト:PTC社内のエンジニアのノウハウや経験を生かしたワークフローを作成する。コンサルティングプロジェクトのサポート。新製品のQAテストなど
「特定顧客オンサイトテストでは、最近、QAの業界で話題になっている『ストーリーカード』(ユーザーの動作シナリオを作成する)というアプローチを採用する。ストーリーカードは、『1回作成すればOK』というわけにはいかないので、基本的には、定期的に何回か作成する。それを、PTCの社内テストプログラムに反映する」(ソープ氏)。
特定顧客社内テストでは、日本QAセンターが実施可能なテストを定義する。また、顧客にデータとテスト工数の提供を依頼するという。
特定バージョン社内テストでは、新バージョンを把握し、新たなユースケースシナリオや、テストケース作成に関する標準プロセスを構築。また、作成したテストケースを実施し、PTC本社のQAへ結果報告する。
「従来、機密性の高い日本の顧客データと、当社のQAテスト設備は離れていた。日本でQAセンターを開設することで、同じ場所でテストできるようにする」(ソープ氏)。
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