Windchill 10.0は“トップダウン型”開発に最適なエンタープライズPLM:大幅刷新でグローバル開発支援
PTCのPLM製品群が大幅に刷新された。Windchill 10.0は「エンタープライズPLM」構想に沿って、上流から下流までを包括的に管理するソリューションとなった。
PTCは米国時間2011年4月2日、Windchill 10.0をリリースした。インタフェースの大幅な改良と併せて、ソフトウェア管理、マテリアル管理機能の統合や、品質管理、コスト管理などの機能も盛り込まれており、2010年2月にJim Heppelmann氏が語った「エンタープライズPLM」ビジョンを踏襲するものとなっている。以下で主要な機能を紹介する。
多品種少量開発向け機能の強化
ベース設計からの派生品管理について、BOM情報のリストだけでなくアセンブリを含めて閲覧・編集できるようになった。製品オプションなどについては論理ルールを設定することで依存関係を制御可能だ。
“トップダウン開発”支援
Windchill 10.0では要件定義から始める開発スタイルに対応する機能を充実させている。バリエーション開発や製品開発においては、図面を書き起こすことからではなく、機能定義などの要件からBOM情報を引き出し、ベースとなるアセンブリを構築できる。これにより、部品表を中心にCADデータを構成していくような開発スタイルが実現する。
また同様に、コンフィグレータを利用した派生設計でも論理ルール定義を基に自動的に選択可能な構成が選べるようになっている。論理ルールは、グローバル全体のルールだけでなく製品ファミリ独自のローカルルールなどを選択的に組み込める。また、現行品、次期バージョン以降の展開についても個別のロジックで管理できる。
同様の機能を持つ製品もあるが、BOMリストによる設定と併せてアセンブリ情報を閲覧できる点がポイントだ。
フォルダに入れれば登録開始! 利用者負担を軽減する機能強化
データ登録・検索操作や管理運用の手間など、既存ユーザーから要望が多かった実業務での煩雑な作業を大幅に改善している点も今回のリリースのポイントだ。
Explorerとの連携強化
作成データを登録する際はWindchill画面を開いてアップロードする必要があったため、作業の煩雑さから、登録データが最新でない、登録されないといったケースがあったという。
Windchill 10.0ではWindows OSのExplorerと連携する機能を強化してこの問題を解決している。具体的にはユーザーのローカルPCに特定のWindchill専用フォルダを用意、フォルダにドロップするとWindchillにデータ登録が行われる仕掛けだ。この際、必要があれば、ローカルPC側にある元データを削除することもできるため、バージョンが異なるデータが複数あるといった問題は解消できるとしている。
Windchill本体の操作画面も大幅に変更されており、カスタマイズ可能なタブ表示機能やExcel風の操作が可能なBOMリストなどが提供される。また、画面遷移の待ち時間を低減させるために非同期の動的データロードを使った「Web 2.0」的な操作感も実現している。
また、運用管理面では、セットアップやアップグレード作業を大幅に簡易化しており、プリアップグレード作業や、MCADのチェックアウト解除手続きなどが不要になっている。データ完全性検証機能も組み込まれており、より安全なアップグレードが行えるようになっているという。
検索機能、フィルタリング機能
検索機能では、完全一致の情報のみを抽出する機能が追加された。また、検索結果一覧からの個々のデータ表示は画面全体の遷移が不要となるよう、検索結果を独立した「ウィジェット」に表示できるようにした。図面閲覧を素早く行える利点がある。
製品構成検索にも動的なオートフィル機能が盛り込まれており、検索候補語句から選択することで作業効率向上を図っている。
フィルタリング機能では、属性だけでなく、図面を基にした空間フィルタが可能になっている。これにより「あるアセンブリの一部の領域にある部品全て」のような位置情報によるフィルタが可能になった。
サーバが勝手に干渉チェック! 待ち時間なしの開発フローに
Windchill Interface Management Service(IMS)という干渉チェックサービス機能が盛り込まれた。干渉チェックをサーバ側がバックグラウンドで実施するため、利用者に待ち時間が発生しない。定期的に自動検証し、必要があれば担当者にアラートメールを送付するといった使い方ができる。これにより、設計者はチェックのための時間を個別に割かなくても済むようになる。
日本のユーザー待望の機能
10.0を開発する際に各国のユーザーにヒアリングを行った際、日本から要望が多かった機能として挙げられたのが「図面印刷、PDFドキュメントの印刷機能の向上」だ。プリンタ構成の管理や図面サイズの自動取得、対象データ収集機能の強化などが図られているという。
LCA、コンプライアンス、品質管理モジュールの完全統合
数年来買収・統合を進めてきた各種製品が正式にWindchill製品ファミリに統合された。フォルトツリー解析ツール「Relex」、多次元の製品解析ソフトウェア「InSight」、CO2排出量管理ツール「Rapid Carbon Modeling(RCM)」の各機能を統合・整理し、LCA評価、製品コスト分析・評価用の機能を追加、新たに「Windchill Product Analytics 10.0」として提供する。
同製品はPDM情報だけでなく、各種購買データや、ERP情報、法規制情報などと連携して動作する。
Windchill Cost Windchill上でBOM情報を基にコスト評価を実施する機能モジュール。ERPと連携し、見積もり、目標原価、実際原価などをWindchill上で評価・管理できる。
Windchill QMS CAPA Windchillの統合品質管理モジュール。品質面の課題について調査・分析し、PDCAサイクルを実行するための機能を提供する。同モジュールはWindchill 9.1(M050)にも対応する。今後、非適合性管理機能の追加が予定されているという。
Quality/Reliability 旧Relex機能と連携するモジュール。Windchill側でBOM情報が変更された際、フォルトツリー分析結果にも動的に反映されるようになった。
Windchill Product Analytics 製品の化学物質含有量などを管理するデータリポジトリや、各国の法規制別の仕様・要求の対応状況を分析し、レポートする機能、製品の包括的な環境アセスメント情報を分析する機能などを提供する。
Arbortextの完全統合
ドキュメント管理ツールである「Arbortext」がWindchillに完全統合された。これにより、EBOM、MBOMと連携したサービスBOMを、標準仕様で利用できるようになった。サポート・メンテナンス情報を次の構想設計に取り込んだり、号機ごとの情報把握が容易になる。
ソフトウェアの情報を統合管理
ソフトウェア開発部門で使われる管理ツールの統合も実現した。これにより、ソースコードと回路設計図、機構図面をひも付けて管理できるようになる。
ソフトウェア構成管理ツール「IBM Rational CleaCase」や課題管理ツール「JIRA」のほか、オープンソース系のソフトウェア開発環境(統合ソフトウェア開発環境「Eclipse」、バージョン管理ツール「Subvirsion」、バグトラッキングシステム「Bugzilla」)の情報をWindchill上で管理できるようになった。既存システム上のリポジトリとWindcillデータのリンク、もしくはWindchill上に新たに構築することも可能だ。
なお、これら機能の具体的な挙動は、コミュニティーサイト「PlanetPTC」で公開されているデモ動画で確認できる。
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