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砂漠発・日本行き、ソフトバンクが目指す壮大な電力計画スマートグリッド(2/2 ページ)

ソフトバンクがモンゴルにおける風力発電事業に乗り出す。最終的にはモンゴルと日本を高圧直流送電線で結び、日本へも送電できるようにする計画だ。

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アジアスーパーグリッド構想につながる

 以上の2つの取り組みは、自然エネルギー財団会長の孫正義氏が2011年9月に明らかにした「アジアスーパーグリッド構想」(図2)につながるものだ。「アジアスーパーグリッド構想の第一歩、布石と捉えている」(ソフトバンク)。

 孫氏がいう「スーパーグリッド」とは高圧直流送電ケーブルを敷設して、数百〜数千kmという長距離送電を組み込んだ電力網を意味する。


図2 アジアスーパーグリッド構想の概要 総延長距離3万6000kmという壮大な計画だ。時差のある複数の国同士を接続することで、ピークシフトや供給安定化の他、適正価格の実現を狙えるという。例えば、日本貿易振興機構(JETRO)の調査によれば、1kWh当たりの業務用電力料金が高いのは図中ではシンガポール(0.18米ドル)、次いで東京(0.13米ドル)である。出典:自然エネルギー財団

 国内では、送電損失を低くするために電圧を100万Vにまで高めて「交流」送電し、何段階かの変電を経て、100〜200Vに変換している。ところが、送電距離が数百kmを超えると誘電体損失が無視できなくなり、直流送電の方が有利になる。ドイツSiemensによれば、長距離大量送電に最適な技術は高圧直流送電であり、1000kmの送電時(5000MW、80万V)の損失は3%未満だという*4)

*4)Siemensの公開資料を参照(Web)。

 高圧直流送電技術は既に世界各地で利用されており、これを日本国内や日本の周辺地域でも活用しようという構想だ。

 本州の差し渡しの長さは1000kmを超える。対馬海峡は幅200km、宗谷海峡でも40kmだ。高圧直流送電技術はこのような距離に対応できるのだろうか。できる。

 スイスABBは、2008年に中国四川省から上海までの2000kmを6400MW(80万V)で送電するプロジェクトを受注している*5)。海底での直流送電の事例でも、ABBがオランダとノルウェー間の580kmを700MWで送電するプロジェクトを完成させている*6)

*5) ABBの発表資料。6400MW(640万kW)という容量は、東京電力と東北電力をつなぐ相馬双葉幹線(容量631万kW)よりも大きい。

*6) ABBの発表資料


図3 ジャパンスーパーグリッド構想の概要 国内の電力会社がもつ既存の連系線を補完する役割を持つ。出典:自然エネルギー財団

図4 東アジアスーパーグリッド構想の概要 総延長距離は図3の2倍に膨らむが、他国と連系できることにメリットがある。出典:自然エネルギー財団

 図2のようなアジアスーパーグリッドを一気に作り上げることは難しいだろう。同氏は、図3図4に示したように、フェーズ1の「ジャパンスーパーグリッド構想」を経て、フェーズ2の「東アジアスーパーグリッド構想」を実現、最終的にフェーズ3のアジアスーパーグリッド構想に至るという絵を描いている。段階的に順を追って拡張するということだ。

 なお、アジアスーパーグリッド構想に匹敵する規模の計画は世界にあと2つある。中国国内の「超高圧送電網計画」(総延長距離4万km)と、サハラ砂漠を利用できるアフリカと欧州を電力線で結合する「デザーテック構想」だ。デザーテック財団は2012年3月10日に、自然エネルギー財団とアジアスーパーグリッドを促進するために協力を開始すると発表しており、複数の巨大グリッドが連携することも考えられる。


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