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「板ばさみの矛盾」を解決、米国で取り組む古くて新しい太陽電池スマートグリッド(2/2 ページ)

高効率かつ低コストな太陽電池を作るにはどうすればよいのだろうか。材料や構造を工夫しても両立は難しい。どちらか一方になってしまう。米国のNRELとORNL、Ampulseは、薄膜Si(シリコン)太陽電池に単結晶構造を作り込むことでこの問題を解決しようとしている。効率15%で、1W当たり50セントの太陽電池を作れるという。

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2種類の太陽電池の良いところ取りをする

 効率を高めようとすると高価になる、安くしようとすると効率が下がる。このような状況を打破しようとしているグループがある。NRELと米ORNL(Oak Ridge National Laboratory、オークリッジ国立研究所)、ベンチャー企業である米Ampulseだ。

 2012年3月5日、NRELは太陽電池を製造する新手法の開発状況を発表した。Si薄膜太陽電池と同じように、モノシランガスを使ってコストを下げながら、Si単結晶を作り上げて変換効率を高めるという手法だ。

 同手法を適用すると、どのような効果が期待できるのだろうか。NRELのビル・スキャンロン(Bill Scanlon)氏によれば、AmpulseのCEOを務めるスティーブ・ヘイン(Steve Hane)氏の発言はこうだ。「変換効率を15%に高めることができ、1W当たり50セント以下のコストで製造できる」*5)

*5) 太陽電池関連の調査会社である米Solarbuzzによれば、2012年3月の薄膜Si太陽電池モジュールの最低小売価格は、1W当たり84セントである(発表内容)。

 AmplusはNREL内のPDIL(Process Development Integration Laboratory、プロセス開発統合研究所)に試験用の製造ラインを設置し、新手法を試している(図2)。現在は、枚葉式の製造ラインだが、今後は金属箔(はく)の長尺ロールを使った量産製造ラインを設計する計画だ。


図2 試験用の太陽電池製造ライン 内部に6カ所のチャンバーを備える。出典:NREL

Siの挙動を金属箔で制御

 しかし、モノシランガスを使う限り、Si結晶ではなくアモルファス構造ができてしまうはずだ。どうやってSi結晶を作るのだろうか。結晶構造が成長するように助ける金属箔(はく)を基板として使う。これはORNLが開発した手法だ。

 まず、あらかじめ結晶構造を持たせておいた金属箔を製造装置に入れ、石英灯を使って850℃に加熱する。その後、金属箔上にバッファー層をスパッタリング法で成膜してから、Si層を成長させる。ORNLの技術はRABiTS(Rolling Assisted Biaxially Textured Substrate、二軸配向基板利用のロール)法と呼ばれている*6)。RABiTS法の助けを借りることで、結晶構造がほとんど乱れていない単結晶に近いSi層が得られるのだという。

*6) ORNLは超電導用線材であるイットリウム系材料(YBCO)の厚膜テープを低コストで製造するため、1990年代にRABiTS法を開発している。AmpulseはRABiTS法を太陽電池製造に適用できるかどうかを調べるために設立された企業だ。

 Ampulseによれば、例えば厚さ50μmのRABiTS金属箔の上に、0.2μmのバッファー層を形成し、その上に配向したn型のSi結晶を成長させる。最後にi型とp型のアモルファスSi層を成長させるのだという。

 NRELの技術はモノシランガスを堆積させる際に役立つ。ホットワイヤーCVD技術と呼ぶ。2000℃に加熱したタングステンフィラメントでモノシランガスを分解することで、700℃に抑えた雰囲気中でCVD法を使って堆積させるというもの。品質の高いSiを堆積できることが特徴だ。

 スキャンロン氏によれば、PDILを運営するブレント・ネルソン(Brent Nelson)氏の主張は明確である。Si層の厚みを発電に十分な10μm以下に維持しつつ、高品質の結晶Si薄膜に仕上げることが可能だという。


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