地デジの空きチャンネルに「絆」を深めるコンテンツを――NECが配信システムの運用検証を仮設住宅で開始:震災から1年、再生へ向けた取り組み
NECは、宮城県亘理町の仮設住宅85世帯を対象に「まちづくりコミュニティ形成支援システム(愛称:絆チャンネル)」の運用検証を開始する。ルネサス エレクトロニクスとシマフジ電機の技術協力を得て試作開発した「超小型送信ユニット」を用いる。
被災地の再生と街づくりには、住民同士の「絆(きずな)」が欠かせない――。住む家を失った人たちが集まり、そこに新たな生活基盤を築いていくためには、地域自律型・住民本位の地域コミュニティーの形成や、情報格差の解消などへの取り組みが重要となる。
NECは2012年3月8日、宮城県亘理町およびNPO法人 ICA文化事業協会の協力の下、亘理町にある仮設住宅85世帯を対象に、「まちづくりコミュニティ形成支援システム(愛称:絆チャンネル)」のテストを実施すると発表した。なお、同システムのテストは、2013年3月末までの予定で行われる。
このたびのテストは、実用化に向けた運用検証を被災地で行うものである。その内容は以下の通りだ。
- 住民の紹介、あるいは住民主催の娯楽や朝市などのイベント情報・様子など、住民同士の親睦を深めるコンテンツや、子育て情報、防災防犯情報など、生活に密着したコンテンツを住民自らが作り、配信することで、新たなコミュニティー作りの促進や高齢者の外出意欲の向上などを実現する
- 自治体など公的機関からの重要なお知らせを、住民に正確に配信する。また、記事の読み上げと画像と動画を活用することで、高齢者や視力・聴力が弱った方に対しても確実な情報伝達を図る
- 病院や保健所からのお知らせ、栄養管理士による料理番組、保健指導員や生活習慣指導員などによる健康情報や健康体操などを配信することで、住民の健康増進や病気の予防などを支援する
同システムは地デジ対応テレビの空きチャンネルに、自主制作コンテンツを手軽な操作で配信できる。自治体の職員や住民自らがビデオカメラで撮影した映像コンテンツをPCに取り込み、専用のソフトウェアで配信データに変換する。この配信データをPCからUSBメモリに書き込み、それを「超小型送信ユニット」に差し込む。後は、あらかじめ割り当てられた地域コミュニティー用のチャンネルにコンテンツが配信される。
同システムで使用する超小型送信ユニットは試作機で、ルネサス エレクトロニクスとシマフジ電機の技術協力を得て開発したものだという。サイズは156.5mm×64mm×25mm。1チャンネルにつき、1台を設置する必要がある。なお、複数台組み合わせれば、複数チャンネルでの使用も可能だという。
仮設住宅での利用の場合には、集会所に超小型送信ユニットを配置し、分配器を介して同軸ケーブル(有線)で各世帯にコンテンツを配信する。一方、自治会や町内会などで利用する場合などは、超小型送信ユニットにアンテナを取り付けることで、無線によるコンテンツ配信を行う。ちなみに、1ユニットの無線による送信範囲は半径約1.5kmだという(注)。
同システムのメリットは、各世帯で追加機器を導入する必要がなく、配備済みの地デジテレビをそのまま利用できることである。通常のテレビリモコンを使用するため特別な操作も不要。配信するチャンネルも未使用のものを利用するため、既存のテレビチャンネルへの影響もない。
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