エネルギー自給目指す「スマートシティ」の分譲始まる、パナホームが街まるごとで:スマートグリッド
宅内でエネルギーの出入りをゼロに近づけるスマートホーム、街全体で試みるスマートシティ、いずれも実証実験や小規模な販売が続いてきた。パナホームは2012年2月から、50〜100戸規模の「ミニ」スマートシティーの販売を開始する。まずは堺市と芦屋市で取り組む。
パナホームは2012年2月1日、スマートシティ対応の分譲住宅「パナホーム シマートシティ」を展開すると発表した。パナソニックグループの技術や製品と組み合わせた「街まるごと事業」であることが特長。2015年には同事業の売上高1000億円を目指す*1)。
*1) パナホームの2010年度の分譲事業の売上高は394億円、2011年第2四半期までの売上高は175億円である。
スマートシティとは、家庭内のエネルギー最適化に加えて、家庭外におけるエネルギー利用の最適化を実現した街をいう(図1)。再生可能エネルギーによる住宅の消費エネルギー自給や、エネルギー蓄積によるピークカット、生活に伴うCO2(二酸化炭素)排出量の削減が手段だ。パナホームでは、街の建物全体でCO2の排出量がゼロとなる「ネットゼロエネルギー」を実現するという。
パナホームの取り組みは、同社やパナソニックなど9社が神奈川県藤沢市とともに開始した環境配慮型の街づくり事業である「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」構想を垂直展開したもの(関連記事:スマートハウスの実現相次ぐ、トヨタが販売を開始、パナソニックは街ごと開発)。
藤沢市では19haの工場跡地に1000世帯3000人が入居する街を一気に作り上げる。今回のパナホーム スマートシティは、藤沢市の取り組みを50〜100戸規模の戸建分譲住宅に適用した形だ。
ベースとなる住宅は、パナホームの「カサート・テラ」(図2)。高断熱(高気密)や効率換気をうたい、耐久性の高い省エネ住宅であるという。ここに、パナソニックの創エネ・蓄エネ技術を組み込む。家全体のエネルギー管理にはHEMS(Home Energy Management System)の一種である次世代分電盤「スマートエナジーゲートウェイ(SEG)」*2)を使う。
*2) SEGは住宅や店舗に適用するシステム製品。太陽光発電システムの出力や蓄電池の残容量の他、給湯システムや家庭用電気製品の消費電力をリアルタイムに測定し、最適制御できる。消費電力情報を特定省電力無線で集める「i-SEG」と、同じく電力線を用いる「p-SEG」に分かれる。パナホームではどちらも使うとしている。
SEGにより、2種類の暮らし方、すなわち「節約モード」と「エコモード」を選択できるという。節約モードでは、昼間に太陽光発電を自己消費・売電する。夜間には低価格な深夜電力で蓄電した電気を使う。
エコモードは、昼間に太陽光発電により蓄電して夜間に利用し、不足分を系統電力から得る。エコモードは消費電力のピークカットに役立つ。
関西から全国へ
まず、関西地方の2カ所で取り組みを進める。2012年2月からは「スマートシティ堺・初芝」(堺市東区、58区画、1万9674.32m2)、同6月からは「スマートシティ潮芦屋」(兵庫県芦屋市、109区画、3万2313.77m2、図3)の分譲を開始する。
堺・初芝では全戸に太陽光発電システムと家庭用燃料電池「エネファーム」を設置する。潮芦屋では全戸に太陽光発電システムとリチウムイオン二次電池を設置する。利用する機器は異なるものの、いずれも創エネと蓄エネを重視した形だ。ヒートポンプ技術を利用し大気熱の助けを借りて給湯する「エコキュート」の導入も計画している。いずれもパナソニック製品を用いる
今後は、千葉県の新浦安地区など、全国への展開を狙う。
関連記事
- スマートハウスの実現相次ぐ、トヨタが販売を開始、パナソニックは街ごと開発
パナソニックが協力する藤沢市の街は2013年の開業を予定 - 大規模スマートコミュニティーを2013年に建設、東芝が大阪で計画
茨木の工場跡地に18haの街を作り上げる - トヨタが宮城県でスマートコミュニティ構築、震災復興につなげる
300haの工業団地内の工場を中核にエネルギーを管理 - なぜスマートハウスが必要なのか
太陽電池からの逆潮流を避けたい - 電力の一律カットは負担が大きい、「スマート節電」の実証試験始まる
電力会社もまだまだ苦しい
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.