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温泉に悪影響なく発電可能、福島で地熱利用の試みスマートグリッド(2/2 ページ)

日本は世界第3位の地熱資源国だ。しかし、地熱の利用がほとんど進んでいない。さまざまな理由があり、1つは既存の温泉地との調整が難しいためだ。国内でも導入が進み始めたバイナリー発電は、温泉の源泉には手を加えない。ボーリングも必要ない。既存の設備に後付けで導入できる。このため、地熱発電を補う方式として、今後大きく伸びる可能性がある。

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なぜ福島でバイナリー発電に取り組むのか

 土湯温泉(図3)でバイナリー発電に取り組む理由は切実だ。「震災の影響は大きく、大型旅館の廃業も起こった。震災前にあった16軒の温泉旅館は、震災後10軒に減った*5)。これで、温泉収入が減った。供給していた湯は震災前に1800L/分、現在は1000L/分にすぎない。これでは温泉共同組合も成り立たなくなる。バイナリー発電で電力を賄う他、温室利用や魚の養殖などいろいろ考えている」(湯遊つちゆ温泉協同組合)。

*5) 宿泊可能人数は震災前が2500〜2600人、それが1500人に減った。


図3 土湯温泉の全景 安達太良山の北、JR東北新幹線福島駅から南西に約15kmに位置する。出典:JFEエンジニアリング

実は地熱王国だった福島県

 福島県で地熱資源を利用する意味はもう1つある。福島県には、原発2基分の地熱が埋まっているからだ。

 日本地熱開発企業協議会は2011年9月、地熱開発にかかわる14社の協力を得て、東北6県の地熱資源の調査結果を発表している*6)。東北地方復興の観点から、有望な地域と開発可能量を示し、出力3万kW(30MW)のモデルケースの場合の工程表、コスト表を作成した。

*6) 「東北6県の地熱開発有望地区について」(PDF)

 それによれば、開発可能な地域は5カ所。そのうち1カ所が土湯温泉を含む磐梯地域(7地区)だ。磐梯地区は東北最大の地熱資源が眠っており、賦在熱量ベースのポテンシャル出力は、1251〜2502MW(1.2〜2.5GW)に上る。これは典型的な出力の原子炉1〜2基分の出力に相当する。

 磐梯地域には既設の地熱発電所が1つもない。温泉と共存が必要な場合や初期投資を抑えたい場合は、バイナリー発電、大規模な出力を得たい場合は、従来型の地熱発電というように適材適所の開発が望ましいだろう。

 同協議会の資料によれば、30MW級の地熱発電所開発に必要な費用は、地表調査から試運転までを合計して264億円、そのうち坑井調査に32%のコストを要する。バイナリー発電であれば、この部分は不要だ。同協議会は、再生可能エネルギーの全量買取制度において、20〜24円/kWhの買い取り価格が実現すれば、地熱発電が長期的に成立すると見込む。地熱発電の未来は明るい。


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