秋田市沖で国内初の大規模「洋上」風力発電が実現か:スマートグリッド(2/2 ページ)
4つの企業グループが海底からそびえ立つ着床式の洋上風力発電の実現可能性調査に取り組む。大林組と国際航業は秋田市沖でMW級の実現が可能かどうかを調べる。2012年4月には調査結果が明らかになる予定だ。
なぜ洋上発電なのか
洋上ウィンドファームとは、洋上に風力発電用風車を置く発電所。洋上は陸上に比べ一般に風が強く、一定の風向が続くという特長がある。洋上では隣接する家屋や施設がなく、比較的自由に場所を選定できる。さらに平野部における風力発電の適地は次第に減少する傾向にあり、山岳部ではアクセス道路整備などにコスト負担が生じるため、NEDOは洋上に期待している。
海外では既に大規模な洋上ウィンドファームが営業運転を開始しており、例えば欧州では200万kW(2GW)が導入されている(図3)。アジアでは、中国の伸びが著しい。日本風力発電協会によれば、中国は10万kW以上の洋上風力発電を導入しており、2020年には3000万kWを導入する計画を立てているという*1)。韓国にも2019年までに250万kWの洋上風力発電を導入する計画がある。
*1) 日本風力発電協会「東アジアにおける洋上風力発電の現状と動向(概要)−中国と韓国−」(PDFファイル)
しかし、国内では台風などの暴風や波浪、地震、津波、冬季の雷など、自然条件が厳しいため、欧州などの技術をそのまま移転することが難しいという*2)。
*2) 国内初の洋上ウィンドファームは北海道西部、日本海に面した、せたな町が運営する「風海鳥(かざみどり)」(出力600kW×2)である。陸から約1km離れた水深約10mの地点に設置した。NEDOの「平成14年度 新エネルギー導入促進事業」に採択され、2004年4月に運転を開始した経緯がある。デンマークVestas Wind Systemsのタービンを用いた。
この他、国内特有の課題として、漁業権の調整が難しい。漁業権との調整を図るには、沿岸からある程度離れた地点に洋上ウィンドファームを建設することが好ましいが、沿岸からの距離が延びると、送電ケーブルが長くなる他、施設の建設費用がかさむからだ。
洋上風車の実証研究も進む
NEDOは洋上ウインドファームに関連して、今回の委託事業(実現可能性の調査)以外にも各種の実証研究を委託している。例えば、風車の実証研究である。NEDOが2010年5月に東京電力に委託した「洋上風力発電システム実証研究」では、千葉県銚子沖3kmの地点で実証研究を進める(図4)。NEDOによれば沖合で風力発電を施行した国内事例はないため、この実証研究によって洋上風車の実機に関するデータが得られるという。
図4 洋上風力発電システム実証研究のイメージ 洋上風力発電システム(ローター直径90mの風車)1基と、風況観測タワー、波浪観測装置を組み合わせてデータを集める。水深は約11m。実証研究期間は2010〜2013年度。出典:NEDO
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