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日本には「黒潮」がある、海流発電の研究をIHIや東芝が着手スマートグリッド(1/3 ページ)

日本列島に沿って南側を流れる黒潮。他のさまざまな海洋エネルギープロジェクトと共に、この黒潮の海流エネルギーを取り出す研究開発が始まった。直径40mのタービンを2つ取り付けた長さ100mの浮体物を海底にケーブルで係留するという壮大なプロジェクトだ。商業化の暁には出力800MWという巨大な海中発電所が完成する。

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日本には「黒潮」がある、海流発電の研究をIHIや東芝が着手
黒潮の流れ

 地球表面の約7割を覆う海洋。海洋には巨大なエネルギーが秘められている。海洋エネルギーの源は太陽光と、地球に働く太陽や月の引力の差によって生じる潮汐力だ。2種類のエネルギーは、海水に吸収されて波、潮の満ち引き(潮流)、海流、海洋温度差などの海洋エネルギーに姿を変える。

 海洋エネルギーを何とか取り出せないか、古くから研究が続いている。例えば、波力発電は、1799年にパリのムッシュー・ジラール(Monsieur Girard)とその息子によって特許が申請されている。しかし、長い間実用にはならなかった。1910年に至ってようやくボショー・プラティーク(Bochaux-Praceique)氏がフランスのボルドーに近いロワイヤンの海岸に出力1kWの波力発電機を据え付けた。さらに長い停滞期を経て、1970年代に入ると英国やノルウェーで研究が盛んになり、1990年代からは当時のECによる国際研究が始まった。

 比較的難易度が高そうに見える海洋温度差発電にも歴史がある。海洋温度差発電は水面と深海の海水の温度差を利用して発電する手法だ。第一次世界大戦後の1930年代にキューバのマタンサス湾で、ジョルジュ・クロード(Georges Claude)氏により開発が始まった*1)。当時の出力は20kWだ。

*1) 同氏はフランスの化学者、1898年に発見されたばかりの不活性ガスNe(ネオン)を使ったネオン管を1910年に発明。その後、ネオンサインを製造する世界初の企業を立ち上げて多額の資金を得る。多彩な発明家でもあり、「フランスのエジソン」とも呼ばれる。

 キューバにおける海洋温度差発電プロジェクトを扱った「Popular Mechanics誌」(1930年12月号)の内容は、Google booksで閲覧できる。この号の巻頭記事 "Power from the Sea" では、史上初の海洋温度差発電がどのようなものであったのか、図解入りで紹介されている。深海(600m)と地上をパイプで結び、現在でいう真空式温水ヒーターと組み合わせて発電した。

ほとんど進んでいない海洋エネルギー利用

 海洋エネルギーの潜在量は大きいものの、風力や太陽光などの他の再生可能エネルギーと比べて研究開発が遅れている。歴史はあるものの、ほそぼそとした研究が続いているという状態だ。2050年に至っても海洋エネルギーによる発電量は最大7EJにとどまるという予測もある。これは2050年時点の太陽光や太陽熱の予測値の1割以下だ(関連記事:世界のエネルギーの77%を太陽光や風力で供給可能、IPCCが発表)。

 海洋エネルギーの実用化はなぜ難しいのだろうか。まず、他の再生可能エネルギーと比べて動作環境が厳しい。金属を腐食(塩害)する海水に機械の可動部が触れる他、フジツボや藻類など海洋生物の付着も著しい。

 海洋エネルギーは風力などと比べて単位面積当たりのエネルギー密度が高い。これは長所だが、短所にもなる。装置が海水から大きな変形力を受けるからだ。海岸線が波により大きく浸食を受けることを考えれば、海洋エネルギー発電システムには風力などとは比べものにならないほどの耐久性が求められることが分かる。故障率が高くなることが考えられるため、メンテナンス性も高くなくてはならない。

 海洋エネルギーの実用化にはさまざまな技術開発が必要になるが、欧米に比べて日本の研究開発は必ずしも進んでいるとは言えない。どのようにして遅れを取り戻すのだろうか。

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