震災を乗り越える東北電力、初のメガソーラーを工期短縮で実現:スマートグリッド
電力各社のメガソーラー設置が相次いでいる。東北電力は3カ所のメガソーラー予定地全てが被災したものの、八戸太陽光発電所(出力1.5MW)を計画より1カ月前倒しで営業運転する底力を見せた。
東北電力は2011年12月20日、同社初のメガソーラー「八戸太陽光発電所」(青森県八戸市)の営業運転を開始した(図1)。
出力は1.5MW(1500kW)であり、年間発電量として約160万kWhを見込む*1)。東北電力の系統と接続し、一般家庭などに電力を供給する。
*1) 設備利用率を12%と仮定して計算した値
図1 八戸太陽光発電所 太陽光発電所を西から眺めたところ。敷地面積5万m2、太陽電池モジュールの設置面積は1万3000m2。西側に位置する八戸火力発電所と道路1本を隔てた立地である。もともとは石炭火力発電(現在は廃止)で残る灰を埋め立てた跡地だった。出典:東北電力
太陽電池モジュールとして異なる3種類の方式を選んだ。「東北電力初のメガソーラーであるため、先行事例として商用運転をしながら発電電力や発電電力量のデータを取得し、今後の計画に反映させる」(東北電力)。
京セラの多結晶Si(シリコン)太陽電池モジュールを5265枚(出力約1MW)使った他、カネカの薄膜Si太陽電池モジュールを2352枚(約0.25MW)、ソーラーフロンティアのCIS薄膜太陽電池モジュールを3168枚(約0.25MW)採用した。
太陽電池モジュールの設置角度は10度、真南に向けて太陽電池モジュールを設置した*2)。
*2) 八戸市は青森県の南東部、太平洋に面した水産都市。青森地方気象台によれば八戸市の年間日照時間は1925時間であり、これは東京の1847時間を上回る。
3カ所のメガソーラー予定地がいずれも被災
電力会社は10年単位の計画に従って、発電所を計画している。東北電力の太陽光発電所も、そもそもの発端は政府が2008年7月に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」にある。電力業界は2008年9月「メガソーラー発電ならびに電気自動車の導入計画」を策定。電力10社が2020年度までに全国約30地点で合計140MW(14万kW)のメガソーラーを建設することになった。これは一般家庭約4万軒の消費電力をまかなえる規模だ。
東北電力は2009年2月、メガソーラー計画のアウトラインを公開。2020年度までに合計10MW規模のメガソーラーを動かす計画だ。このとき、2カ所の立地や規模を示した。1つは今回の八戸太陽光発電所(1.5MW、2012年度運転開始)であり、もう1つは仙台太陽光発電所(2MW、2012年度運転開始である)。ついで、2010年2月には原町太陽光発電所(1MW、2013年度運転開始)の計画を公開している(図2)。
ところが、2011年3月に起こった東日本大震災によって、予定地の3カ所全てが被災してしまった。原町太陽光発電所の予定地(南相馬市)は海岸沿いに立地しており、津波の被害が大きかった。現在に至るまで着工のめどが立たないほどだ。隣接する原町火力発電所も被災しており、2013年夏の復旧を見込む。
仙台火力発電所*3)構内に建設中の仙台太陽光発電所(宮城県七ケ浜町)もやはり津波の被害を受けた。しかし、原町太陽光発電所よりも被害が小さく、現在は造成工事と基礎工事に入ったところだ。営業運転の時期は確定できないという。
*3) 仙台火力発電所で唯一運用が続いている4号機(出力44.6万kW)は東日本大震災により設備に被害を受けていたが、2011年12月20日に試運転を再開するところまで回復した。2012年3月に営業運転再開を予定する。
八戸太陽光発電所は2011年2月25日に着工したばかりだったが、震災後1カ月間工事が休止し、4月11日にようやく工事を再開。「作業員の増員と工法の変更によって、当初の予定(2012年1月)よりも早く営業運転再開にこぎ着けることができた」(東北電力)。実質9カ月で1.5MWの太陽光発電所を立ち上げたことになる。
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