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発電所になるビルしか生き残れない、東芝など8社がフランスで実現スマートグリッド(1/2 ページ)

フランスなどEU各国のエネルギー利用目標は、日本や米国の計画に比べると意欲的だ。例えば、2020年以降に建設されるビルは全てエネルギーを生み出すビルにしようとしている。再生可能エネルギーや電気自動車、エネルギー管理システムを結び付けて未来の都市を実現する。

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エネルギーを外部に供給するビルしか生き残れない、東芝など8社がフランスで実現
エネルギーを生むビル

 再生可能エネルギー源と建物や電気自動車(EV)がスマートグリッドによってつながり、1つのエネルギー自給都市を形作る。未来のエネルギーのあり方として、理想的だろう。

 この理想を追うのがフランス第2の大都市圏グランドリヨン共同体だ(図1*1)。人口7000人、就業者7000人の新街区(スマートコミュニティー)を都市内に建設し、省エネルギーと再生可能エネルギーを大量導入し、次世代自動車の普及を狙う。

*1) フランスの都市の規模(人口)は単独の都市を考えると、パリ、マルセイユ、リヨンの順だ。だが、都市圏(グランドリヨン共同体)を考えると、フランス南東部に位置するリヨンが2位に浮上する。


図1 リヨン市の位置 フランス南東部ローヌ川とソーヌ川の合流点を中心に広がる100万都市。今回対象となるのは合流点の手前に広がる面積150haの地域(コンフルエンス地区)だ(図左下の中央部)。リヨンは温暖で、夏季には気温が30度を超えることも多い。年間日照時間は平均1932時間。年降水量は843mm。

 計画を実行する企業は、国内5社、フランス3社だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2011年12月15日、グランドリヨン共同体と協力協定書(MOA)を結び、「フランス・リヨン再開発地域におけるスマートコミュニティ実証事業」*2)の実証事業予算(50億円)を発表。関係各社が明らかになり、2012年1月から始まる実証事業が動き始めた。2016年3月末までの約5年の期間で実証を進める。

*2) NEDOは2010年12月に東芝と東芝ソリュションに事業を委託している。両社は2011年1〜10月の期間、事業の実施可能性調査を進めており、2012年1月から実際の事業が始まる形だ。

エネルギーを生み出すビルだけが生き残る

 今回の実証事業は、4つのタスクからなる。「ポジティブ・エナジー・ビルディング」「太陽光発電を活用したEV充電管理システムとEVカーシェアリング」「家庭内エネルギーモニタリングシステム」「コミュニティマネジメントシステム」だ。

 ポジティブエナジービルディング(PEB)は、エネルギー収支が釣り合うゼロエネルギービル(ZEB)をさらに発展させた形だ。通常のビルは系統から電力の供給を受けて、内部で消費するだけだが、PEBは消費する以上に電力を作り出し、外部に供給する。再生可能エネルギーの利用がカギだ。

 フランスなどEU各国の目標は、日本や米国の計画に比べると非常に意欲的だ。2020年以降に建設されるビルを全てPEBにしようとしている。今回建設するビル「P-plot街区ビル」(図2)で実証する。ビル建設はフランスの大手建設会社であるBouygues(ブイグ)が担当する。国内企業の分担は、東芝がインテグレーター、三洋電機と旭硝子が太陽電池モジュールなどを担う。


図2 ポジティブエナジービルディングのイメージ 地下1階地上8階の多目的ビルであり、延べ床面積は約1万2500m2。日本人建築家である隈研吾氏が設計を担当した。出典:NEDO

 オフィスエリアの他、商業エリア、住居エリアを含んだ多目的ビルであり、さまざまな電力使用パターンを実証できる。高効率な太陽電池モジュールの他、デザイン性に優れた光透過型太陽電池モジュールも導入する。二次電池と燃料電池、蓄熱システム、消費電力が少ない吸収式冷凍庫とLED照明システムを導入し、エネルギーの利用率を高める。ビル全体をBEMSで管理するほか、住居エリアにはHEMSを導入する。

 PEBだけを独立して立ち上げても、都市のエネルギーに与える影響は少ない。EVや既設住宅との組み合わせが重要だ。どのように実現するのだろうか。

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