看板にも太陽電池、絵を描いて発電は大丈夫なのか:スマートグリッド
変換効率や価格の動向に注目が集まる太陽電池。しかし、屋外に設置される耐久財だということに着目すると、その他の用途が開けてくる。熱反射ガラスの代わりに使う、野立て看板として利用するなど、さまざまな使い方を見てみよう。
いかに小さい面積で大量の電力を取り出せるか、つまり変換効率を高めることが太陽電池の大きな開発目標だ。さらに材料コスト、製造コストの低減や長寿命化も推し進めなければならない。だが、太陽電池にはこれ以外の付加価値もある。
「太陽電池の価値基準は変換効率だけではない。例えば当社が1996年から販売している『太陽スカイライトソーラー』が一例だ」(太陽工業)。
熱を通しにくい熱反射ガラスよりも優れた天井用ガラスとして、太陽スカイライトソーラーを開発したという。
熱反射ガラスとは、室内空間を明るく保ちながら、日射熱を反射するガラスだ。冷房負荷を減らす効果があり、有用だ。一方、太陽スカイライトソーラーは、光を一部透過する太陽電池*1)を封入したガラスや空気層から構成されたサッシ部材だ。
*1) アモルファスSi(シリコン)太陽電池に微小な穴を等間隔で空け、開口率(光が通る部分の面積)を最大20%に高めている。公共施設や商業施設の天井部分への採用が多い。
太陽電池としての性能だけを見れば、太陽スカイライトソーラーの変換効率は、いくぶん低くなる。しかし、熱反射ガラス同様、室内を明るく保つことができる。さらに内蔵する太陽電池から得た電力を利用して、冷房に費やすコストを約3分の1(熱反射ガラス使用時と比較)にまで低減できるという。
人の目に触れる太陽電池を他の用途に使えないか
郊外を走ると、田畑の脇にさまざまな野立て看板が立っているのが見える。中には家屋数軒分の大きな看板もある。
このような看板は日当たりもよい。太陽電池を使って、看板を実現できないか。同社が2011年12月に発表した「結晶デザインモジュール」の発想は、やはり変換効率とは違うところにあった(図1)。
だが、太陽電池の表面にペンキなどを使って文字や絵を描くと太陽電池として機能が大幅に低下してしまう。ペンキの下側に当たる部分が抵抗成分となってしまい、電流を遮断するからだ。
太陽工業の実現手法はこうだ。まず、無機材料を用いたセラミックインクを使い、ガラス表面に薄く焼き付ける*2)。この状態であれば光の透過率を比較的高く保つことができる。
*2) 焼き付け工程で太陽電池モジュールのカバーガラスとインクが一体化するため、屋外でもインクが劣化せず、太陽電池モジュールと同等の耐用年数を確保できるという。インクの色は白や赤、黄色など7色から選べる。
次に、絵を曲線やべた塗りで表現するのではなく、等間隔で並んだドットで表す。ドットの色を変えることで絵を描く。絵が描かれた部分もそうでない部分にもドットがあり、光の透過率はさほど変わらない(図2)。つまり、太陽電池モジュールによって発電量が偏ることがなくなる。システム全体としての効率改善に役立つ技術だ。
このような手法を採ったため、出力の低下を16%に抑えられたという。寸法が1480mm×985mm×46mmという太陽電池モジュールの出力は、168Wである。
図1に示したジェイエイフーズみやざきの場合は、縦4枚×横16枚の太陽電池モジュールを使って、出力9kWを得たという。
結晶デザインモジュールの主な販売先は工場や公共施設だという。「工場では、電力を得るという目的以外に、太陽電池を使っていることで、環境対応の企業努力を宣伝する意味が生まれる」(太陽工業)。ジェイエイフーズみやざきの場合も、冷凍に発電した電力を使う他、九州最大規模の野菜専門冷凍加工処理施設として、自然との共存をアピールする目的で採用されたという。
結晶デザインモジュールの価格は、1m2当たり、26万2500円だ。広告の絵柄を指定後、1カ月で納入可能だという。
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