連載
EVの爆発的な普及には何が必要? 「無線充電」だ:小寺信良のEnergy Future(10)(3/4 ページ)
EVは運転しやすく乗り心地もよい。価格も手ごろになってきた。だが、誰にでも向くわけではない。充電インフラに課題があるからだ。EVの普及を加速するには無線充電が必要だという主張は正しい。Qualcommの取り組みから将来のEVの姿を予測する。
走りながらの無線充電へ
Qualcommの方法を延長していくと、走行中に充電するということも可能だ。研究所レベルでは既に成功しているという。もちろん全ての道路に送電装置を埋め込むわけにはいかないが、例えばサーキットコースなら、常設が可能だろう(図2)。給油なしのEVカーレーシングが楽しめる時代が来るかもしれない。
図2 無線充電機能付きレーシングEV Lola GroupとDrayson Racing Technologies(DRT)が開発したレース用EV「B12/69EV」。HaloIPTは、このEVに対して20kWで無線充電した実績がある。レース用EVであるため、パワーウエイトレシオを高く保ち、重量増は避ける取り組みが重要だった。今後は走行中の無線充電にも取り組みたいという。
現在Qualcommで計画している送電容量は、3kW(単相交流)と7kW(三相交流)、18kW(三相交流)と3種類ある(図3)。Qualcommのギルバート氏によれば「3kW送電というのが、恐らくデファクトになるのではないか」という。7kWは高速充電用、18kWはタクシー業界などから要望があったものだという。一度客を乗せてしまえばどこまで走るか分からない業種なだけに、一般車両とは違って大容量の充電池を搭載しなければならないからだろう。
図3 Rolls RoyceのコンセプトEV Qualcommが買収したHaloIPTは、2011年5月に開催されたジュネーブモーターショー(Geneva 2011)で、Rolls Royceが開発した「Phantom 102EX」(コンセプトカー)向けの無線充電システムを展示した。同システムは3kW(単相)または7kW(三相)で動作し、効率は92%だったという。
Qualcommは2012年の計画として、EV向け無線充電の実証実験を2012年からロンドンで実施する事を発表した。英国首相からも個人的にサポートをもらっているという(図4)。
この実験では、Qualcomm方式の受電装置を装備した実験車50台を投入し、約2年間かけてさまざまな実証実験を進める(図5)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.