固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術〔前編〕SOFC開発競争の動向を知財から読む:知財コンサルタントが教える業界事情(9)(2/3 ページ)
高分子形燃料電池登場のわずか1年後に、固体酸化物形燃料電池が登場。その裏にはどんな技術開発の歴史と事業開発競争が隠されているのだろうか? 今回は出願年に注目したいので、商用特許情報データベースを試用する。
特許情報から見たSOFCの開発動向
図4の各国のSOFC特許件数推移(縦棒グラフ)をご覧いただきたいと思います。図が大きいので、全体像と併せて、各国のグラフを拡大して掲載します。
なお、2000年の米国公開特許件数は約1カ月分であることと、「米国以外の公開制度のある国にも出願された特許」が公開対象になっていることにご注意ください。
*日本で家庭用燃料電池として、SOFCが注目され始めたのは2000年ごろであり、米国公開特許制度がスタートしたのも同じ2000年11月21日以降の出願からです。そこで、2000年以降の特許出願に注目することにしました。
図4から、特許出願件数が多いといわれている日本だけでなく、欧州や米国の出願件数も多いことが分かります。
特許が公開されるまでに通常1.5年の期間があることを考慮すると、日本の特許出願件数は横ばいですが、欧米豪の特許出願件数は減少傾向に見えます。これらのことから、セラミックス材料が主体となるSOFC分野では、日本企業が奮戦していることが分かります。
それに対し、韓国の特許出願件数には増加傾向が見受けられます。「特許出願件数が多ければ技術力が高い」とはなりませんが、企業の特許出願件数の多さは技術開発への注力度合いを示し、出願件数の多い国や地域は、その対象となる技術の市場としての魅力度が大きいことになります。
そこで、以降では韓国特許に注目してみましょう。
韓国企業のSOFC開発の動向は?
図4の2009年には、出願件数の増加が見られます。そこで、2009年の韓国特許の出願人名に注目してみることにします。すると、英語表記に「Korea」を含む公的研究機関や大学の出願が26件、サムスン電子(Samsung Electronics、Samsung SDIなどを含む)が18件、Poscoが7件あり、これらの出願人名で全体(111件)の半数(51件)を占めています。
しかも、ここで注目した各出願人の2008年の出願件数は、それぞれ英語表記に「Korea」を含む公的研究機関や大学が3件、Samsungが0件、Poscoが3件であり、この時期に国家主導の新たな技術開発が始まったものと推測されます*。
*ちなみに、日本で家庭用SOFCの販売を開始したJX日鉱日石エネルギーは、2008年に1件、2009年に4件の韓国特許を出願しており、「JX日鉱日石エネルギーのSOFC特許戦略」の周到さも注目されるべきです。
最後に、日本企業のライバルになるであろうCeramic Fuel Cells、NexTech Materials、Bloom Energyについて、特許出願状況に注目してみましょう。
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