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分子で作った「ナノEV」、車輪の制御も自由自在電気自動車

オランダの研究者が100万分の3mmという微小な「ナノEV」を開発した。ワイヤレス充電でエネルギーを得て走行し、方向転換も可能だ。分子材料を運搬するEVとして応用できるという。

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 オランダUniversity of Groningen(フローニンゲン大学)は、約130個の原子からなる分子サイズの電気自動車を動かすことに成功した(図1)。他の分子などを搭載して運搬する「ナノEV」として応用できるという。2011年11月10日発行の科学誌Natureの表紙を飾った*1)

*1) Kudernac, T.,et al. Electrically driven directional motion of a four-wheeled molecule on a metal surface. Nature 479, 208-211 (10 November 2011) 論文へのリンク

 開発したのは、同大学教授のベン・フェリンガ(Ben Feringa)氏のチーム。同氏の専攻は合成有機化学だ。ナノEVは、3nmという微小サイズながら、シャーシと4つの車輪を備え、全体が1つの分子となっている。

 銅基板の上で外部からエネルギーを10回与えると、ほぼ直線状に6nmを進んだ。車輪1回転当たりの前進距離は0.7nmだ。


図1 分子サイズのナノEV ナノEVを右横から見たところ。シャーシ(水色の部分)の前後左右に飛び出すように4つのホイール(紫・赤)が付いている。図では右側の前後のホイールだけが描かれている。電子を外部から注入すると、ホイールが黄色の矢印のように回転して前進する。EVの全長は約3nm、「シャーシ」の前後に2つの窒素原子を含む巨大な芳香族炭化水素分子だ。炭素環や複素環の数は24個である。車輪はC13H10(フルオレン)と同じ原子団からなる。実験時の温度は7K。出典:オランダUniversity of Groningen

生物を超える分子モーターを開発

 フェリンガ氏の着眼点は、ヒトを含む生物が幅広く利用しているモータータンパク質だった。モータータンパク質は筋肉の収縮や、神経細胞内の神経伝達物質の輸送のために生体内で大量に利用されている。モータータンパク質がなければ、ヒトは動くことも考えることもできない。

 生物のモータータンパク質は直線状のガイド分子に沿って動き、いわばモノレールのように動作する。これまで開発された分子モーターは全て1方向に動くものだ。そこで、フェリンガ氏は自由平面上で機能するモーター分子を開発しようと考えた。

 最初の成果は1999年に光照射によって駆動する分子モーターの開発だ。分子モーターは2つの部分から構成されている。回転子と固定子だ。これは通常のEVなどで使われているモーターと同じ構成である。

 今回のナノEVでは、光照射モーターとは異なる構造のモーター分子を作り込んだ。シャーシに相当する部分から付き出すような構造である。ちょうどF1のフォーミュラカーのような形状だ。

 分子EVは、二次電池(蓄電池)を搭載していない。駆動に必要なエネルギーはワイヤレス充電で受け取る。具体的には、走査型トンネル顕微鏡(STM)を使って、電圧をかけ、ナノEVにトンネル効果で電子を与える*2)。ナノEVのエネルギー準位が高まると、車輪が回転し始める仕組みだ。

*2) なお、ナノEVを製造する際にもSTMを使っている。複数の分子部品を集めて、設計図通りにナノEVを組み立てた。

 フェリンガ氏の分子モーターは、シャーシとホイールの間の車軸に相当する部分が炭素原子間の二重結合(C=C)になっているため、このままでは回転できない。STMからの電子注入によって、C=C結合が励起し、回転する。ちょうどホイールが半回転すると、シャーシから延びている炭化水素鎖(-C6H13)がホイールの逆回転を妨げて、さらに半回転するよう助ける。この過程は逆に進めることもできるため、同氏の分子モーターを使ったEVはバック走行も可能になる。

本当に車輪で駆動しているのか

 ナノEVは本当に車輪の回転が駆動力となって進んでいるのだろうか。静電力のような別の力によって単に滑っているだけなのかもしれない。そこで、フェリンガ氏のチームは、車輪を逆回転させたときに何が起こるのかを調べた。

 まず後輪と前輪を逆に回転させると、車体の位置はほとんど変わらなかった。次に右側の2つ車輪と左側の2つ車輪を逆に回転させた。すると、回転走行になった。車輪で駆動していることの証明は完璧だといえるだろう。

 チームの次の目標は最高速度を高めることと、より効率のよい走りを実現することだ。

 なお、ナノEVが走行する様子を短いアニメーション映像で閲覧できる。


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