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グラフェンを利用した大容量キャパシタ、再生可能エネルギーの普及に役立つスマートグリッド

高性能な大容量キャパシタを低コストで製造できれば、再生可能エネルギーの普及や電気自動車の性能向上に役立つ。米国の研究者は静電容量が高くなるグラフェンの新構造を発見した。鉛蓄電池に匹敵するエネルギー密度と、鉛蓄電池を上回るパワー密度を備え、1万回以上の充放電が可能なキャパシタを製造できるという。

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 米エネルギー省(DoE:Department of Energy)のブルックヘブン国立研究所(Brookhaven National Laboratory)は、テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)の研究者が開発した「活性化グラフェン」の特性について分析し、その結果を明らかにした。

 活性化グラフェンは、鉛蓄電池(バッテリー)に匹敵するエネルギー密度と、鉛蓄電池を上回るパワー密度を備え、1万回以上の充放電が可能だという*1)。鉛蓄電池の代わりに活性化グラフェンを用いたスーパーキャパシタ(電気2重層コンデンサ)をPHV(プラグインハイブリッド)車に搭載すれば、1日1回の充電を行ったとして、27年間使い続けられるという。

*1)編注:エネルギー密度が高いほど、大量の電力を蓄えることができ、パワー密度が高いほど、短時間に大量の電力を出し入れできる。鉛蓄電池のエネルギー密度は20〜50Wh/kg、パワー密度は最大1kW/kg程度。キャパシタはパワー密度が高く、充放電回数が多いため、PHVの低速走行時のエネルギー回生にも利用できる。

 DoEはさらに、発電所に活性化グラフェンを使った巨大なスーパーキャパシタを設置すれば、風力発電や太陽光発電など出力が変動しやすいエネルギー源からの電力供給を平滑化できるのではないかと考えている。

電極の表面積を大きくしたい

 活性化グラフェンは、あたかもスポンジであるかのように電子をたやすく吸収する。これは、活性化の過程で形成されたナノレベルの細孔構造が電子を吸着することで、エネルギーを蓄積するキャパシタ電極の比表面積が大きくなったために起こる現象だと考えられる。活性化グラフェンは、高性能フィルタに使われる活性炭の原理を原子レベルのグラフェンに適用した材料だ。表面積が大きくなる理由として、活性化グラフェンを用いたキャパシタの電極表面にあたかも直径数nmのナノチューブが複雑な構造をとって並んでいるのではないかと考えられた。

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図1 University of Texasの研究チーム Dong Su氏(左)とEric Stach氏(右)が、ブルックヘブン国立研究所で活性化グラフェンのサンプルを調べているところ。出典:ブルックヘブン国立研究所

 そもそもの発端は、ロドニー・ルオフ(Rodney Ruoff)教授率いるUniversity of Texasの研究チームが、KOH(水酸化カリウム)を使って、グラフェンの表面を化学的に活性化させたことだ*2。ブルックヘブン国立研究所の研究者であるエリック・スタッチ(Eric Stach)氏とドン・スー(Dong Su)氏は、活性化グラフェン表面のナノチューブが負の曲率を示すかどうかを検証した(図1)。

*2)編注:キャパシタのエネルギー密度は、印加電圧(V)の二乗と静電容量(C)に比例する。今回の取り組みの目標は、電極表面の炭素の表面積を大きくすることで静電容量を高めようというものだ。ルオフ氏はKOHを使うことで比表面積が3100m2/gと大きい多孔質のカーボンを作り出した。これを実現する構造としてフラーレンを裏返したような負の曲率を持つ、炭素の単原子層が3次元状に結合するというモデルを組み立てた。スタッチ氏とスー氏が、このモデルを実証したというわけだ。

 スタッチ氏によると、活性化グラフェンは、大きく湾曲した原子1個分の厚さの「細胞壁」が網の目のように張り巡らされた3次元ナノ構造を備え、この構造によって幅1nm〜5nmの小細孔が形成されるという。

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図2 活性化グラフェン 活性化グラフェンの電子顕微鏡像。3次元構造をとる多孔質のネットワークに見える。写真の全体が1つの高分子になっている。

 スタッチ氏とスー氏は、ブルックヘブン国立研究所の高機能ナノ材料研究センター(Center for Functional Nanomaterials)の放射光施設であるNational Synchrotron Light Sourceのシンクロトン光源や、DoEの研究機関の1つであるローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)のNational Center for Electron Microscopyの電子顕微鏡を用いて活性化グラフェンの特性を分析した。

 研究チームは現在、活性化グラフェンの微細構造の寸法を最適化しようとしている。最適な寸法は何に使うかによって異なる。静電容量を高める以外に、燃料電池に採用したときの触媒作用を高めるといった最適化目標がある。

 今回の研究は、エネルギー省科学局(Office of Science)、米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)、Advanced Technology Institute(ATI)から資金提供を受けて実施された。

【翻訳:滝本麻貴、編集:@IT MONOist】


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