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使ってみて分かった、家庭用蓄電装置の未来小寺信良のEnergy Future(7)(2/3 ページ)

災害時の「非常食」ならぬ「非常電源」としての期待がかかる家庭用蓄電池。ソニーの一般家庭向けの小型蓄電池は、使える非常電源なのか。小寺信良氏が利用シーンを想定して評価した。

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家庭用蓄電池のコストをどう考えるか

 今回の震災の経験から、停電には2つのパターンが考えられる。1つは災害により、電力網が寸断された場合。これはそもそもいつ災害が来るかも予想できず、復旧もいつまでに、という時間が読めない。もう1つは先の計画停電のように、事前に停電時間が予告され、事前の準備が可能なケースだ。

 今後も計画停電が実施されるかどうかは、不透明である。この夏は電力大口需要者に対してピーク時15%の節電義務を課すことで計画停電が回避されたが、暖房需要により電力消費が増す冬もまた同じように節電義務を課すことができるのか。さらに2012年の夏はどうか。現時点では原発に変わる大規模発電施設はすぐにはできない。福島第一原子力発電所をはじめ複数の原発が停止し、再稼働について社会的抵抗が大きい場合、今後数年の夏冬は慢性的な電力不足に陥る可能性がある。

 ホームエネルギーサーバーは、さきほどの両方のケースに対応できるが、15万円というコストをどのように考えるかは、ずいぶん違う。ダイレクトな災害に備えるケースでは、基本的にいつ役に立つのか分からないものに15万円投資することになる。一般家庭においては、それは厳しいコストではないだろうか。

 災害に備えるのであれば、このような製品は家庭ではなく、学校などの公的施設に向いているように思われる。今回の災害を機に、学校には地域の災害対策のハブとしての役割が大きく期待されている。避難所として場所を提供する役割だけでなく、自治体からの要請により緊急用の毛布、水の備蓄などを進めている学校もある。これら緊急用備蓄の一環として、「電力」も十分考えられる。

 地方自治体には大抵自家発電設備があるので、都道府県庁はもちろんのこと、市役所町役場クラスでも、発電機そのものが水没したり流出したりしない限りは一般家庭と一緒に停電してしまうようなことはない。しかしバックアップ電源として、あるいは関連施設への貸し出し用として幾つか確保しておくというのは、「アリ」だろう。

 もしかしたらNHKにも大きな需要があるかもしれない。NHKでは緊急災害時の避難所設置用に、数十台単位でテレビを保有している。2004年の中越地震の時には、NHK新潟局から約70台のテレビが各避難所に配布、設置された。テレビは電源がなければ映らない。電力が復旧するまでの数時間、電源設備も一緒に設置する必要性は高いと思われる。

 一方計画停電は、電力逼迫(ひっぱく)時期が近づけばある程度の予測は出てくるだろう。家庭での利用を中心に考えていたとしても、次期計画停電が発表された途端、爆発的なヒット商品となる可能性がある。

家庭内のどのようなニーズを満たすのか

 実際にCP-S300Eの給電能力300Wでどれぐらいの機器が動かせるかが、気になる。製品の前面パネルに目安が書いてあるので、製品の概要が分からないユーザーでもすぐに能力を把握できる。具体的には以下の表1のようになる。

表1各種電気製品の利用可能時間
機器 想定定格消費電力 利用可能時間
ラジオ 10W 約25時間
携帯電話機 5W 約50時間
固定電話 5W 約50時間
扇風機 50W 約5時間
テレビ 100〜300W 1〜2.5時間
BD・DVDレコーダー 50W 約5時間
LED照明 25W 約10時間
ノートPC 50〜150W 1.5〜5時間
利用時間は目安としてとらえた方がよい。

 いざ停電になったとき、ホームエネルギーサーバーをどのように使えばよいのかが次の課題だ。

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