ヒントはクラフトマンシップにあるんです:“明るく・楽しく”!? 環境配慮型設計・現場の心得(1)(1/2 ページ)
環境アセスメントってナニ? 高懸念物質……? クリエイティブなモノづくり業務と関係ないけど、対応しないと仕事にならない“お約束”に、楽しく挑むにはどうしたらいいのでしょう? 明るく・楽しいモノづくりがモットーのカリスマ改善人が「環境配慮」を考えたら……。
まずは序論から……
1960年代までの「とにかく新製品を!」という時代から、1970年になって自動車業界を揺るがしたマスキー法ともいわれる米国の大気浄化法を皮切りに*、先進国の環境に関わる規制は当然のごとく厳しさを増していきましたが、地球環境存続のためには当然のことでしょう。ご存じの通り、マスキー法(当時は絶対に実現不可能といわれていた)を真っ先にクリアしたのが、本田技研工業(ホンダ)のCVCCエンジンであり、それはまさに日本のモノづくり力を世界中に広めるエポックメイキングな出来事でした。
さて、21世紀になりRoHS指令、REACH規制、Eup指令およびErp指令と欧州の化学物質に対する規制や規則はその対象製品、対象化学物質を加速度的に広げ、かつ製品のライフサイクルを通じての対応を求めています。そしてそれらを自国語に翻訳したかのような規制・規則が世界中のあちこちで生まれて、「人口減少の日本」のモノづくり企業は、それに適合した製品を開発し続け、「グローバル市場」へ製品を売り続けなければ生き残れないのは明白です。このコラムでは規制や規則の詳細に触れるのではなく、モノづくりの仕組みとして、いかに環境配慮を進めるかについて私の考え方を3回の連載記事で述べていきます。題して「明るく楽しい環境配慮型設計」、異論・反論はもちろんあると思いますが、28年間モノづくり企業に勤務し、社員が生き生きと働ける現場作り、シンプルかつ実効性の高い品質・環境マネジメントシステムを構築した経験と「モノづくりへの思い」に基づいて、私の素直な気持ちが伝わることを願っています。
*マスキー法 米国で1970年に制定された大気浄化法のこと。上院議員だったエドマンド・マスキー(Edmund Muskie)が法案を策定したため、マスキー法(Muskie Act)とも呼ばれる。自動車などの排気ガスによる大気汚染を低減させることを目指した。
モノづくりの要素と資格
私はここ数年、講演の機会があるごとに「モノづくりの要素と資格」について話しています。連載の初回はこれについて少し深掘りし、「環境」の重要さに結び付けてみましょう。まず、モノづくりの要素は以下の5つ構成されます。
- Safety:安全
- Environment:環境
- Quality of Products:品質
- Cost:価格、費用
- Delivery:納期
この5つの要素を、実際の「開発〜製造〜販売、サービス(モノづくりプロセス)」での具体的思考および行動(私はこれを「モノづくりの資格」と呼びます)に当てはめると、次のように理解できるでしょう。
Safety(S、安全) 有無を言わさず問答無用!=お客さまがケガなどをしないように、また、生産に携わる人が生産時にケガをしないように。これを軽視するモノづくり企業は存在すべきではない。
Environment(E、環境) モノを作る資格=製品に有害物質が含まれていない。製品が有害物質を生成しない。製品を作るに当たり、極力エネルギーを使わない、CO2の排出を抑えるなど、地球環境にできる限りの配慮しなければ、モノを作ってはならない。
Quality(Q、品質) モノを売る資格=不良品をお客さまに届けてはならない。100%の良品を市場に提供する明確な根拠と自信がなければモノを売ってはならない。
Cost(C、価格、費用) 他社と競争する資格=安ければ安いほど良いのではなく、「お客さまに納得して買っていただける価格」で販売しなければならない。もちろん、ランニングコスト(運用費用)も含めて考慮されるべきである。
Delivery(D、納期) 他社と競争する資格=これも早ければ早いほど良いのではなく、お客さまの希望する納期ピッタリに納入しなければならない。
つまり、
安全と環境に配慮した製品を、同じく安全と環境に配慮した現場で生産し、不良品は絶対に出荷せず(理想的には「作らず」)、その上で適正な価格、的確な納期で同業他社と競争する
というのが私の考えるモノづくりです。S(安全)、E(環境)を担保した上でお客さまに喜んでいただけるQ(品質)の製品を作り、C(コスト)、D(納期)で勝負! ですね。
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