2日分の家庭用電力をEVから引き出す:電気自動車
災害などによる停電に備えて、EVを家庭用の「電源車」として使うための開発が進んでいる。日産自動車はEVから住宅に直接電力を送る取り組みを進めており、2011年度中の販売開始を目指す。「リーフ」から2日分の使用電力を住宅に供給できるという。
災害などによる停電に備えて、EVを家庭用の「電源車」として使うための開発が進んでいる。三菱自動車は、電気炊飯器などに最大1500Wの電力を供給するための電源供給装置の製品化を2011年度中にも目指しており、トヨタ自動車も家電を利用するための機器開発を2012年をメドに進めている。
こうした中、日産自動車は、EVにサービスコンセントなどを設けて家電を直接接続するのではなく、住宅と自動車の間で相互に電力をやりとりする技術開発を優先してきた。これは、「リーフ」に搭載する電池容量が24kWhと大きいためである。一般家庭であれば、2日分の日常使用電力を供給できる容量だ*1)。
*1)電気事業連合会によれば、国内の一般家庭の電力使用量は1カ月当たり約300kWhである。これは1日当たり10kWhに相当する。
さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーや夜間電力を使ってリーフに充電し、日中のピーク需要時に住宅に戻すことで、ピークカット効果や系統の安定化に寄与できるという。
急速充電ポートから200Vを供給
日産自動車は2011年8月2日、リーフから一般住宅へ電力を供給するシステムを公開した(図1)。系統電力との連系方法などについて検討を重ねた後、2011年度中の販売を開始を目指す。
図1 日産自動車が公開した家庭への電力供給システム リーフの急速充電ポートから一般住宅の分電盤に電力を送る。積水ハウスが横浜市に建設した実証実験住宅「観環居」で動作するシステムを公開した。充電と電力供給を切り替えたり、リーフ内の電池残量などを表示する専用の操作表示パネルを使う。
同システムは、リーフが備えるCHAdeMO仕様の急速充電ポートと定格6kWの電力制御装置(PCS)を接続して使う。PCSは家庭の分電盤に接続されている。電力制御装置は単相3線式200Vの系統出力のみに対応し、普通充電や100Vの出力については製品化の予定はない。
システムの利用前にはリーフ側の設定が必要だ。「リーフ本来の設計では車体から電力を引き出すような使い方を考えていない。電力供給プログラムへ対応させるため、内蔵する組み込みソフトウェアの書き換えが必要になる」(日産自動車)。
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