EVを家庭用電源に変える取り組み、各社が製品化にメド:電気自動車
家電などを接続できる電源車として電気自動車を使う取り組みが進行中だ。トヨタ自動車は2012年をメドに開発を進め、三菱自動車は年内にも製品化が可能だ。日産自動車は搭載する電池が多いことから、直接家電を動かすよりも、家庭用の電源として使うための開発を優先している。
電気自動車(EV)は電力を蓄積し、自力で移動できるため、「電気のタンクローリー」として利用可能だ。移動用電源や災害用、非常用電源として役立つ可能性がある。
東日本大震災ではユーザーがトヨタ自動車の大型ミニバン「エスティマハイブリッド」から電源を取り炊飯に使った例がある。エスティマハイブリッドはキャンプなどのレジャーに使われることを想定してコンセントを設置していたが、予想外の使われ方をした形だ。日産自動車のEV「リーフ」でも大容量電池と回路が接続されている12V端子を電源として利用しているユーザーがいるという。
このような動きを受けて、トヨタ自動車は2012年に発売を予定する「プリウス プラグインハイブリッド」に「サービスコンセントを設置する」(同社)ことを目標に開発を進めている。エスティマハイブリッド(1.4kWh)と比較して、搭載する電池の容量が5.2kWhと4倍近く増えるため、電気を運んで使う用途により適するからだ。
三菱自動車はi-MiEVで実現
三菱自動車は販売中のEV「i-MiEV」用のアダプター技術を開発している。i-MiEVを交流100Vの家庭用電源として使うための器具だ。「年内投入ができるようにするための技術開発のメドが立っており、当初の計画を1年前倒しして開発している」(三菱自動車)。i-MiEVの電池容量は16kWhと多く、純粋なEVを電源車として使う取り組みでは三菱自動車が先行している。同社は個人ユーザー向けのオプション製品として提供することを考えている。
電気自動車と家電製品という閉じた組み合わせを実現した後、使用済みの電池の利用も視野にいれたスマートグリッドの仕組みが実用化する見込みだ。
同社は2010年12月に、三菱商事や三菱電機と共同で電気自動車を使ったスマートグリッド関連システムの開発に着手している。三菱自動車の名古屋製作所において、太陽光発電システムとEV、EVから回収した再生蓄電池を設置し、相互に電力をやりとりするためのEMS(エネルギーマネジメントシステム)を開発中である。同時に、EVの蓄電池を電力源として使いながら、EVとしての利用に支障がでないようにする技術(EIS:Electric Vehicle Integration System)の開発も進めている。
日産自動車は家庭と自動車の連携を重視
EVと電源に関する開発について、日産自動車の取り組みは他社とは異なる。発売中のEV「リーフ」は電池容量が24kWhと大きい。リーフに100Vのサービスコンセントを設けて、家電向けの電源として使うというよりも、「家屋と電気自動車の間で相互に電力をやりとりする技術開発を優先する」(日産自動車)。家庭からEVに電力を送るH2V(Home to Vehicle)だけでなく、EVを家庭の電源として利用するV2Hを開発中だ。
関連記事
- 2日分の家庭用電力をEVから引き出す
リーフ用の装置を日産が開発 - 「燃料電池」「非接触充電」「住宅への給電」、日産自動車が先進技術を公開
先進技術説明会で、LEAF to Homeシステムの姿を見せる - 日産自動車のEVトラックはひと味違う、電池を冷凍用に使う車両も
電源車トラックなど3種類の小型トラックを展示 - トヨタが燃料電池車の普及目指す、さいたま市と共同で
内蔵エネルギー量がEVより大きい燃料電池車を電源車として使う
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.