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電車の屋根でもおなじみ! パンタグラフの動作メカメカリンクで設計しよう(4)(1/2 ページ)

ジャッキ工具や電車の屋根でよく見る菱型のリンク機構 パンタグラフの動きを解説。さて新幹線の700系に付いているのは何型?

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 前回は、四節リンクの揺動運動機構において、リンクが直線の場合と曲線の場合の違いや、支点位置を変更して直角レイアウトの動作特性の違いを確認しました。今回は応用編として、そのほかのリンクの組み合わせを紹介していきます。

【No.12】駆動リンクと従動リンクが等長で中間リンクを交差した場合

 駆動リンクと従動リンクが等長であり、中間リンクを交差した場合を考えてみましょう。

 図1のアニメーションから、下記のことが分かります。

駆動リンクと従動リンクが等長で中間リンクを交差した場合
図1 駆動リンクと従動リンクが等長で中間リンクを交差した場合
  • 駆動リンクが時計回り(CW)すると、従動リンクは反時計回り(CCW)する
  • 駆動リンクが時計回り(CW)したとき、中間リンクと駆動リンクが一直線上に重なる角度α1の位置で全てのリンクが拘束され、駆動リンクが最大回転位置となる
  • 駆動リンクが反時計回り(CCW)すると、従動リンクは時計回り(CW)する
  • 駆動リンクが反時計回り(CCW)したとき、中間リンクと従動リンクが一直線上に重なる角度α2の位置で全てのリンクが拘束され、駆動リンクが最大回転位置となる

 この機構では、駆動リンクと従動リンクが逆回転するという特性を実現できるのです。

 No.12の機構は、支点の間に、等長の駆動リンクと従動リンクを逆向きに配置し、それぞれの先端を中間リンクで接続させることで互いに逆方向に揺動させる機構は、歯車を使うよりも省スペース化が図れることから設計自由度が大きく、かつコストダウン可能なことから実務設計ではよく利用されています。

 対角線上に対称形状となっていることから、単純に考えれば駆動リンクと従動リンクが完全に同期して回転するのかと思いがちですが、図1より駆動リンクと従動リンクそれぞれの開閉角度に差が出るという特徴があります。そこで、左右のリンクを不等長にしてできるだけ同期するよう設計するのですが、歯車のように左右のリンクの開閉角度を完全に同期させることができません。この特性によって不具合を誘発した事例を図2に示します。

左右の扉が同期しないことによる不具合例
図2 左右の扉が同期しないことによる不具合例

リンク機構の動作説明

設計機能の説明

  リンク機構の動作説明 設計機能の説明
1. 左右の開閉扉が開閉の軌跡の中で極力同じような開閉角度になるように、駆動リンクと従動リンクの長さを不等長とします。全開になったとき(4.の状態)に駆動リンク側の扉が落下通路をふさがないよう、あらかじめリンクの設定角度α<90°に設計します。 水平に閉じられた開閉扉の上に商品が搬送されてきてきます。
2. 今回の例では、駆動リンクの方が従動リンクより長く設計しているため、開き始めは従動リンク側の扉の開角度が大きくなる傾向にあります。 左右の開閉扉の角度が異なるため、摩擦抵抗により開閉角の大きな右側へ商品が傾きながら落下します。
3. 従動リンク側の扉が先行する開閉過程の中で徐々に駆動リンク側の扉の角度が追い着き、左右の開閉扉の開角度が同じになるポイントがあります。このポイントを過ぎると逆に駆動リンク側の扉の方が、従動リンク側の扉の角度より大きくなります。 先の過程で商品は傾く慣性モーメントが発生しているので、この時点で開角度が等しくなっても状況は変わらず、ますます商品の傾きは加速していきます。
4. 遅れた従動側の扉が90°開く頃に、駆動リンク側の扉は90°以上の位置になります。 開閉扉が全開になると商品が傾いた状態で落下するため、集積時に商品が立つなどの不具合が発生します。


 上記の事例は、開閉扉の開速度が遅くなるほど顕著に商品が傾いて落下する確率が増えます。逆に開速度が0.1秒のような速い開速度の場合は、商品が傾いて落下する確率が劇的に減少します。

 設計する立場では、開閉速度が速いだけでは、根本的な不具合要因をなくしたことにはならないため、歯車やカムを利用して左右の開閉扉が完全に同期して開閉する機構を提案すべきと考えます。

【No.13】パンタグラフ

 パンタグラフは、4つのリンクをひし形に構成し伸縮することによって、固定端の対面にある自由端を平行移動させるものです。元来は製図などに用いる用具の名称でしたが、同じような形と動きから鉄道車両の屋根に取り付けられている集電装置や自動車に搭載されているジャッキ工具としてなじみ深い機構です。

 四節リンクとして用いるパンタグラフは、1つのジョイントが固定されるだけなので自立できません。従って、四節リンクのパンタグラフは、一般的に吊り下げて利用されます。

 図3の例では、パンタグラフは重力によって伸びてしまい、活用することができません。

図3 パンタグラフ(1)
図3 パンタグラフ(1)

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