エレキPLM先駆者の目から見た既存PLMの問題点:モノづくり最前線レポート(28)(2/2 ページ)
業務プロセス目線で必要な情報流通ができているか? 既存PLMの問題点をビシビシと指摘した図研 上野氏。氏いわく「できていないのは当たり前」。
サプライチェーンとエンジニアリングチェーンの結節
2009年に同社はBOM PRODUCERを発表している。エンジニアリングBOMと製造BOMの橋渡しをするBOM機能としてリリースされたものだ。各社のPDMとも連動するが、あくまでもBOMを中心軸に据えたデータ管理の手法にこだわっている。ただの図面管理ではなく、モノを作る上での重要な知財を意味ある形で利用・流用できなければビジネスの支援にはならない、という思想が強く表れているといえる。
同社が発表した「visual BOM」は、このBOM PRODUCERをベースに、エンジニアリングチェーン側の効率化と、サプライチェーンとの結節による情報活用にフォーカスを拡げている。
設計からの細かな指示がなくとも、生産技術や工場側が阿吽(あうん)の呼吸で最適解を導き出すような「擦り合わせ」製造が日本では行われてきた。しかし、これでは機動的なモノづくりはできない。設計情報を「ブラックボックス化」することなく、もっと早い段階から、他部門とシェアするべきである。この際、「エレキ・メカという区別は、設計にとっては重要だが、他部門に取っては製品を構成する単なる“部品”であり、区別はない。皆で活用するためにはこの設計情報を汎化・軽量化する必要がある」(上野氏)。
サプライチェーンの川の中には大小さまざまな企業がかかわってくる。なかにはIT資産に大きなコストをかけられない企業もあり、CADの生データをベースとしたサプライチェーン全体での図面情報流通というのは事実上不可能に近い。だからこそ、軽量の3次元CAD図面閲覧環境は絶対に必要だという。図研がラティス・テクノロジーと資本関係を結んでいるのは、同社が軽量な3次元CAD図面ビュワー「XVL」を持ち、また無償ビュワーを配布しているからだ。
生産管理システムとの接続性を高める
一方サプライチェーン側の情報は、設計にとってブラックボックスである。「調達コストや歩留まり、加工費など、全ての実績情報は、生産管理システムが持っているが、主に工場の実績を集計することが目的で、それが設計側にフィードバックされている現場は少ない。これでは精度の高い原価企画やシリーズ展開が検討できない」(上野氏)
そこで図研では、生産管理システムなどを展開する東洋ビジネスエンジニアリングとの提携を進めている。エンジニアリングチェーンの効率化に強みを持つ図研と、サプライチェーンの効率化に強みを持つ東洋ビジネスエンジニアリングが共同でどのような情報を相互に共有すべきか、検討を進めていくものとみられる。
エレクトロニクスの領域で成功したモジュラー設計や部品の標準化の仕組みを、メカ設計や製品設計に適用するために、設計データとBOMを連携させるのが、上野氏らが展開する「visual BOM」の基本構造だ。同社ではBOMの解釈をBill Of Materialsではなく、“Basis Of Monozukuri”であるとしており、これが上野氏の考えているPLM像を表す言葉のようだ。
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