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エレキPLM先駆者の目から見た既存PLMの問題点モノづくり最前線レポート(28)(1/2 ページ)

業務プロセス目線で必要な情報流通ができているか? 既存PLMの問題点をビシビシと指摘した図研 上野氏。氏いわく「できていないのは当たり前」。

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 「第22回 設計・製造ソリューション展」で異彩を放った図研ブース。事前記事で紹介した通り、既存PLMの概念に切り込んだテーマ展示とプレゼンテーションは、同社製品を利用しているかどうかを問わず、本質を見直すきっかけとなり得るものだった。本稿では、プレゼンテーションの内容や事前取材で聞こえてきた内容を紹介する。

PLMでできていなそうなこと

 「PLMって何ですか? という問いにまともに回答できる人はまずいない。現在PLMを導入されている企業も、ベンダーがうたうような劇的な効率化を図れているところは少なく、ますますPLMを分かりにくくしている。それ以前に、3次元データの活用レベルすら上がっていない」(図研 常務取締役プリサイト事業部長 上野泰生氏)

 プレゼンテーションで上野氏が示した「PLMでできていなそうなこと」を見るとドキリとする方も多いのではないだろうか?

「PLMでできていなそうなこと」

設計部門

  • 流用可能な部品やユニットを探せるか
  • 展開機種の全モデルを評価できるか
  • 変更の差分をリストだけでなく形状からも確認できるか
  • エレキとメカ双方の情報を同時に参照できるか
  • 製品要件と設計情報が関連付けられているか

設計を中心とした他部門との連携

  • 構想段階で実績情報を利用した原価企画ができるか
  • 設計段階で工場や工程を想定できるか
  • サプライヤとのやりとりは図面レスで行えているか

他部門を中心とした設計部門との連携

  • 出図前の設計情報を製造側が参照できるか
  • 営業が開発途中の製品コストやスペック、外観を参照できるか
  • 設計変更情報は視覚化され、電子的に流れているか

 さて、貴社ではどれくらいできているだろうか?

 流用設計や原価企画の精度向上、3次元データによる情報連携の重要性は以前から語られているものの、多くの場合、設計部門で完結した仕組みとなっているのが現状だ。

 「PLMの概念は企業やベンダーごとにさまざまな解釈がある。そうした事情を置いたとしても、そもそも上記のようなことがきちんと実現できていなければモノづくり支援ITとはいえない」(上野氏)

設計者の持つデータはなぜブラックボックスなのか?

上野氏
ブースセミナに登壇する図研 常務取締役プリサイト事業部長 上野泰生氏

 PLMシステムの多くは、CADデータを軸にして、BOMを捉えようとする傾向がある。しかし、実際にBOMが重要な役割を担うのは、手配以降のフェーズ。 そのため、新設部品は設計最終段階の出図時にようやく採番されることが一般的だ。CAD上で詳細設計している段階では、担当者個人レベルでエクセル部品表を管理していることがせいぜいで、製品全体の仕掛かり構成がBOMとして表現されることはない。CADデータとBOMを連携することは重要であるが、そこには設計プロセスを考慮した仕掛けが必要だ。

 「企画・構想フェーズや設計フェーズでは採番されていない部品やBOMとひも付いていないデータがあふれている。これらは担当者個人の作業環境の中に漫然と置かれていて、外からうかがい知ることができない」(上野氏)

 機構系設計では採番前の図面があまり管理されていないのが一般的だ。設計者側も採番される前段階の図面を管理する手間は避けたい。上野氏はこの現状に対し疑問を呈する。

 図研はもともと電気回路設計に強い企業。回路設計CAD「CR-5000」やハーネス設計CAD「Cabling Designer」などの製品を持っている。また2005年にはエレクトロニクス製品向けPLM「DS-2」をリリースしている。2006年のダッソー・システムズとの提携を機に、本格的にメカニカルCADのノウハウを吸収、総合的なPLMベンダーとしての地位を確立してきた経緯がある。

 「エレクトロニクス製品の競争力は、標準化・モジュール化がカギであり、各社がこぞってこれを進めている事に対し、機構設計・製品設計の世界では、これをあまり重要視していないことに驚かされた」(上野氏)

 上野氏は、新規で似たような部品を作ってしまう理由として、先に述べた採番前の図面が管理されていないこと以上に、BOMと元のCADデータが関連付けられていないことの問題を指摘している。

 上市済みの製品から部品を探すのは一般的だが、たとえ目的とする部品を見つけたとしても、自分が設計した部品でないと、どのデータを編集すればいいのか分からない。これを探し出す手間はもちろん、探したとしても他人の流儀でモデリングされたデータを編集するくらいなら、自分で再度設計した方が早いと考えるのは当然である。「エレキの部品は99%購入品で、かつ形状が機能を表さない。CADを使わず、BOMだけで行える流用や設計変更も多く、システム化しやすいのに対し、メカ設計では都度図面を描かざるを得ない=それが仕事、という一面が強いのは事実」(上野氏)だという。しかしこれを続けていては、設計費用のみならず、金型費用や検査費用、加工指示の手間は減らない。システムだけでなく、プロセスにも見直しの必要があるだろう。

 また流用設計を行う際は、要件に沿って部品を検索しなくてはならない。例えば、「最大外径が△mm以内のねじ」といった絞り込みを行うためには、外径の情報を登録しておけば可能だ。しかし、「仕事に追われている設計者が、使うかどうか分からない属性を、モデリングの度に入れてくれるだろうか? IT化のために、業務を増やす本末転倒なシステムは絶対に定着しない。部品の大きさなどはCADから自動で抽出できるので、これを属性として使えばよい。BOMや設計変更情報なども、必ず存在する情報であり、これらもCADと連動させれば、部品を探しまた、評価するプロセスは、大幅に支援できるはず」(上野氏)という。

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