RP機や3次元スキャナが元気! CADはちょっと控えめ?:第22回 設計製造ソリューション展(DMS)レポート(1/4 ページ)
DMS2011では、福島原発ミニチュア、30万円3次元プリンタ、ウルトラマンゼロなど面白モノづくり事例が幾つか見られた。外資系CADベンダー展示は、やや控えめがトレンド?
2011年6月22日〜24日に東京ビッグサイトで恒例の設計・製造ソリューション展(DMS)が開催された。既に、各所でDMSのレポートが出つつあるが、ここでは「モノヅクリング! デジタル」(以下、モノヅクリング)な観点から最近のトレンドにスポットを当ててみたい。
発展を続ける3次元スキャンとRP
昨今のモノヅクリングの記事でも注目度の高いのが、RP(ラピッド・プロトタイピング)である。3次元データの普及がある程度進んできた、ということもあるが3次元スキャンなどと組み合わせて、RPを使うための入り口が増えたということもあるだろう。そこで、今回の取材は「ラピッドプロトタイピング・3次元プリンタゾーン」から始めた。
高度化する3次元スキャナ
最近は、RPなどの普及もあり、3次元スキャナというと「人体をスキャン」、あるいは「歴史的な物をスキャンしてアーカイブする」ことばかりに注目が向いているが、もともと3次元スキャンが発達してきた土壌はあくまでも、製造された物体の「検査」である。その、厳しい検査に対する要求に対して3次元スキャナも着実な進化を遂げているからこそ、このような新たな用途にも対応できるようになっているといえる。
今回、丸紅情報システムが紹介していた、「ATOS」のトリプルスキャン方式のデジタイザは、ユーザーが従来課題としていたものを解決している。
スキャナの問題の1つは、「スキャンしてもうまく撮り切れない」ということである。撮り切れない理由は幾つかあるが、主なものとして、影になっているということや、表面が光沢面あるいは黒色面になっていることなどが多い。トリプルスキャン方式のモデルでは、2つのカメラで同時に撮影するだけでなく、センサー中央部のプロジェクタと組み合わせて左右のカメラの撮影画像を同時独立して取り込む。つまり1回の測定について3つの角度からデータを取り込んで補完し合う。このため、いままで1回のスキャンでは取りにくかった、例えば穴の側面など、1つのカメラだけでは影になっているようなところも、一度に撮影することができるため、測定時間の大きな削減が期待できる。
また、プレスの板金部品の光沢面や黒色部品のような物体は、従来は何らかの形で表面に処理をしない限りは、うまくスキャンをすることができなかったが、このモデルでは直接計測をすることが可能になっている。どうしても表面処理が難しい物は元より、スプレーなどで何とかなっていたものに対しても、それらの作業が不要となるため、工数の削減につながる。実際、この点だけでも従来ユーザーの問い合わせが多いようだ。
また、トリプルスキャンは、マニュアル測定から全自動の測定にまで対応している。日本ではまだマニュアル測定が多いようだが、ドイツなど欧州ではロボットを活用した全自動での測定が一般的とのことだ。そのようなニーズに対応したVirtual Measuring Room(VMR)の活用で、複雑な設定や付加的なソフトウェアの導入をすることなしに、自動測定のプロセスを実現することができる。
このような技術はまだハイエンドの測定器にとどまっているのも事実だが、より安価なシステムにも徐々に導入されていくこともユーザーとしては期待したい。
ラインアップが多様化するRP
RPに求められるニーズは多様である。使用される産業や用途によって、求められる素材や平滑度などが異なる。そのようなさまざまなニーズに対応するように各社の製品のラインアップが増えている。同時に低価格化も進んでいる。そのようなバリエーションの展開が今回は目立った。
3次元プリンタの老舗3D Systemsが展開しているProjetシリーズでは、今回高解像度の「HD6000」や、以前から展開している「HD3000」により精密な造形モードが追加された「HD3000 Plus」が展示されていた。従来のHD3000よりも若干値段は高いが、造形の精度の向上だけではなく、ワークサイズも大きくなっている。HD6000はこれからの展開のようだが、ABSライクやポリカーボネートライク、さらには耐熱性タイプの材料など4種類が用意されるとのことだ。
ところで、STLやProjetなどの印象が強い3D Systemsだが、今回「BFB3000 Plus」という30万円のRP機も紹介されていた。もともとはこれを販売していたイギリスのメーカーを3D Systemsが買収したものだ。現在、ブースにも代理店募集中と案内が出ていたことで分かるのだが、この製品を販売する販売代理店がないため、直接イギリスに注文する必要があるが、クレジットカードも使えるほか、キット(自分で組み立てる)であれば10万円とのことなので、趣味や教育目的で考える場合には十分に意味があるものであろう。実際、イギリスにおいては教育目的の導入がかなり進んでいるようだ。
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