リチウムイオン電池の量産車採用が本格化:人とくるまのテクノロジー展 2011(1/3 ページ)
『人とくるまのテクノロジー展 2011』が、2011年5月18日から20日までパシフィコ横浜で開催された。東北地方太平洋沖地震の影響により、来場者数は昨年より減少したものの、電気自動車やハイブリッド車関連を中心に、注目すべき新技術の展示が行われた。
EV/HEV/PHEVに熱い視線
今年も注目を集めたのは、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)に関連した展示である。特に、自動車メーカーの展示からは、量産車へのリチウム(Li)イオン電池の採用が本格化していることが感じられた。
トヨタ自動車は、HEVミニバン「プリウスα」の3列シート車のカットモデルと、同車に搭載されたLiイオン電池パック(写真1)を公開した。プリウスαの2列シート車では、ベースとした「プリウス」と同様にニッケル水素電池パックを搭載していた。これに対して、3列シート車では、Liイオン電池パックを採用した上で、電池パックの設置位置を運転席と助手席の間に変更している(写真2)。
本田技研工業は、PHEVの試作車(写真3)と、 2011年4月に北米市場で発売した「シビック ハイブリッド」のLiイオン電池パックを展示した。PHEVの試作車は、中型セダンの「インスパイア」をベースとしており、排気量2.0リットル(l)のエンジン、走行/回生用と発電用の2つのモーター、容量6kWhのLiイオン電池パックを搭載する。同社は、2013年までに、この試作車をベースにした PHEVを発売する予定である。
シビック ハイブリッドのLiイオン電池パックは、直列に接続された4個のLiイオン電池モジュール(1個のモジュールには10個の電池セルが直列に接続されている)や、走行モーター用インバータなどから構成されている(写真4)。従来モデル(2006年発売)のニッケル水素電池パックと比べて、電圧は9%ほど小さいものの、出力電力が33%増、体積が36%減、重量が29%減となっている。
三菱自動車は、小型商用車タイプのEV「MINICAB-MiEV」を紹介した(写真5)。 2008年夏から販売されているEV「i-MiEV」の電動システムが転用されている。Liイオン電池パックの容量が10.5kWhのモデルと16kWh のモデルがあり、前者は、政府の補助金制度を利用すれば約170万円で購入できる。2011年内に発売される予定だ。
米General Motors社は、2010年末に北米市場で発売したPHEV「Chevrolet Volt」を披露した(写真6)。今回の展示が日本初公開であったことから、多くの来場者の目を引いた。今後は、国内市場での販売開始を目標に、公道での走行試験を実施する予定だ。
日野自動車は、小型商用車向けの新型HEVシステムを公開した(写真7)。このHEVシステムでは、エンジンとモーターの間にクラッチを組み込むことにより、エンジンの動作とモーターの動作を分離できるようにしている。これにより、モーターだけで走行するEV走行の実現や、ブレーキ時の摩擦エネルギーを電力に変換して電池に貯める回生ブレーキの効率化が図れるようになる。同社は、「従来のHEVシステムと比べて、平均燃費を1.5倍に高めることができる」としている。
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