Gbps時代を迎える車載情報系ネットワーク(5/7 ページ)
現在、欧州の市場を中心に、従来よりも高速なネットワーク技術を用いる車載情報機器の開発が進められている。数年前までMbpsのレベルであったネットワーク通信速度は、現在では1Gbpsを優に超えるようになってきている。本稿では、まず車載情報機器のネットワーク技術にGbpsクラスの通信速度が必要になっている背景を説明する。その上で、高速の通信速度に対応する車載通信用ICの動向についてまとめる。(本誌編集部 取材班)
車載カメラの開発も並行
ソニーは、GVIF(Gigabit Video Interface)というSERDES規格を車載情報機器向けに展開している。GVIFは、1996年に、ノート型パソコンにおいて液晶ディスプレイとパソコン本体を、映像信号と制御信号を含めて1対のツイストペアケーブルで接続する技術として発表された。最大伝送速度は2Gbpsである。
車載情報機器への採用が始まったのは2002年。それ以降、国内メーカーの自動車に搭載されている純正カーナビ向けを中心に、GVIFに準拠するSERDES ICは累計で1000万個以上出荷されている。
実は、National Semiconductor社の事例で述べたコンテンツ保護機能への対応については、ソニーの取り組みが先行している。2009年8月から、HDCPを内蔵したSERDES ICの量産を開始しており、2010年4月には、電波産業会(ARIB)から、国内のデジタルテレビ放送向けに利用するための認可も取得しているのだ。2011年末までに、量産車に採用されることも決まっている。ただし、GVIFの最大伝送速度が2Gbpsであることから、XGA(1024×768画素)/24ビットカラーの映像データまでしか対応していない。これについては、2012年第1四半期に、GVIFをベースに最大伝送速度を向上した規格を用いて、720pのフルHD映像データの伝送にも対応できる製品を投入する予定である。
ソニーは、車載カメラモジュールや車載カメラ用撮像素子でも有力な企業として知られている。同社は、今後の進展が予測される車載カメラシステムのデジタル化に対応するために、130万画素のCMOSセンサーとGVIFを搭載した車載カメラモジュールを開発中である。量産車への採用時期は、2013年〜2014年を想定している。
SERDES技術の最大の特徴は、ほかの車載情報系ネットワークの規格と比べて、最大伝送速度が圧倒的に高い点にある。それに対し、ネットワークトポロジとしては、基本的にポイントツーポイントしか利用できない点がデメリットになる。これについて、National Semiconductor社は、「FPD-Link?はリピータ機能を搭載しており、デイジーチェーン接続も可能になっている」と説明している。また、ソニーは、ポイントツーポイント以外のネットワークトポロジを利用できるようにするために、SERDES ICを経由した入出力信号の切り替えが行えるGVIF専用のスイッチングICを開発中である(写真2)。
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