検索
インタビュー

EVを核とした「トヨタ電力」を目指すのか電気自動車 トヨタが考える次世代環境車(1)(2/2 ページ)

トヨタ自動車が考える次世代環境車について、どのような新しい可能性があるのか、同社常務執行役員の友山茂樹氏に聞いた。第1回は、EVなどの次世代環境車とスマートグリッドの関係である。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

発電機として使える車の姿

MONOist 次世代環境車から電力を取り出して使いたいという切実なニーズがある。どのように実現していくのか。

友山氏 震災の時には、ユーザーが当社の大型ミニバン「エスティマハイブリッド」から電源を取り、炊飯に使った例がある。非常時には電力源として認められているということだ。これまではレジャー用に用意していた機能だったが、今後は、次世代環境車は電力を使う(充電する)ものであると同時に発電して電力を供給する媒体にもなる。

 現在は外部電源を取り出せる車種がごく限られているが、今後は基本的にHV(ハイブリッド車)、PHVに外部電源を取り出すためのコネクタを付ける方向で開発する。これはトップダウンの方針である。2012年に発売する次世代環境車にもぜひ付けたい。

 災害時に電力を取り出せる車のように、実際に役立つ機能を1つ1つ増やしていくのが、快適なスマートグリッド構築の道だと考えている。当社は自動車メーカーであるため、このような発想になった。電気のみを生み出す立場だとこういう発想にはならないのかもしれないが。

MONOist そのような車がどのようにスマートグリッドに育っていくのか。

友山氏 サービスコンセントが付いた次世代環境車の次の方向は、車内に蓄えた電力量、この残量を住宅に伝えることだ。V2H(Vehicle to Home)と呼ばれている機能であり、実用化したい。このためには住宅にもともとつながっている系統電力側の情報も必要になる。現在は豊田市などと共同で実証実験を実施中だ。標準化が必要なため、社会に普及するにはもう少し時間がかかるだろう。

 当社はトヨタホームとも協力して、住宅の設計の中にV2Hの仕組みなどを組み込んでいくことも考えている。

EVに求められる電池の量

MONOist スマートグリッドの要素として役立つ次世代環境車には、HVやEV、FCV(燃料電池車)などさまざまな候補がある。どれが本命なのか。

友山氏 これまでも脱石油社会の実現のため、次世代環境車が重要になると発言し、いろいろな技術を紹介してきた。近い将来の姿を考えると、近距離はEV、中距離はPHV、長距離の決まったルートを走る車はFCVが適している。これは電池の量や、水素の取り扱いなどを考えなければならないからだ。2020年をめどにすると、これが現実的な解だ。当社はこれら全ての技術開発を進めているが、当面はEV、PHVに集中する。

MONOist 搭載する電池の量を増やすと、スマートグリッド用途に使いやすくなるのではないか。

友山氏 現在の電池の価格や性能を前提にすると、ある一定以上の容量を求めると、次第に車の重量の多くの部分を電池が占めることになってしまう。電池を電池で運ぶことになり、これでは何をしているのか分からないことになる。

 PHVが電池で走れる距離を、電池の性能改善や、車自体の効率化によって伸ばしていくのが現実的かつ社会に受け入れられる方法だと考える。逆に言えば、電池の性能が向上し、コストが下がれば、次世代環境車に占めるEVの割合が高まるということだ。

 社会的に車から電力を取り出したいという要請や、政府の意向はあるけれども、搭載する電池の量を2倍にするということにはなかなかならない。ただし、PHV自体にも当社のような方式だけではなく、他社のようにレンジエクステンダー方式*1)もある。どちらに収束していくか予想することは難しい。

*1)例えばGeneral Motors(GM)はEVの走行距離を引き延ばすため、内蔵エンジンを発電機として利用し、電池残量が減少したときにモーターに電力を供給する方式を採用した。これをレンジエクステンダー方式と呼ぶ。一方、プリウスPHVは、ガソリンエンジンで走行することができる。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る