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スマートグリッドを機に、なぜものづくりが変わるのかスマートグリッド(2/2 ページ)

スマートグリッド関連の開発が遅々として進まない。機器単体を設計できたとしても、プロトコルなどの標準化が遅れているため、他の機器と接続できないことが要因の1つだ。しかし、震災を機に、再生可能エネルギーなどの早期普及が強く望まれており、待ちの姿勢はもはや許されない。スマートグリッドではどのようなものづくりが求められているのか、日本ナショナルインスツルメンツに聞いた。

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MONOist 開発プロセスを圧縮するという3つの手法は、実際にスマートグリッドを開発するメーカーが求めていることなのだろうか。

早川氏 求めている。当社の製品はスマートグリッドの実証実験、実運用に広く採用されている。当社製品が採用された理由から、顧客が何を考えているのかが分かる。例えば米国のスマートグリッド実験の例だ。米国最大の実験は2つあり、1つが天然ガスや電力を供給するPacific Gas and Electric(PG&E)が主導するカリフォルニア州のCalifornia Smart Grid Project、もう1つがやはり天然ガスや電力を供給するCenterPoint Energyが主導するテキサス州のCenterPoint Energy Projectだ。どちらも当社の製品を採用している。

 PG&Eは、インバーター制御や監視モニタリング、大規模バッテリー制御、マイクログリッド制御などに当社の製品を採用している。理由は、スマートグリッド向け技術開発において早期にシステム構築が可能というものだ。開発プロセスの圧縮が求められていることが分かる。

 CenterPoint Energyの事例はよりはっきりしている。同社は2005年から50万個のAMS(Advanced Metering System)を配置してきた。これは自動検針システムであり、現在のスマートメーターに相当する。AMSは独自の組み込み機器だ。2009年に米エネルギー省(DoE:Department of Energy)から6億4000万ドルの助成金を受けた後、制御系(高度遠隔監視制御端末)として独自開発品ではなく当社の製品を採用した。性能やコスト、高度なデータ解析が可能なことも理由だが、遠隔によるファームウェアの書き換えが可能なこと、オープンプラットフォームであり、フレキシビリティが高いことを理由に挙げている。

 CenterPoint Energyは、独自品では開発に1年を要すると予測していたが、当社のグラフィカルシステム開発製品を使うことにより、3カ月で完了したと発言している。

 自動課金などをもくろんだインドのRestructured Accelerated Power Development & Reforms Programme(R-APDRP)などでの採用の理由もCenterPoint Energyと同じだ。

スマートグリッドの開発にはLabVIEWが適する

MONOist 開発効率の高い開発ツール、自社で専用部品を開発しない、完成した機器に通信機能を標準で備える、という3つの手法をどのように実現しているか。

早川氏 開発ツールとしてはLabVIEWを使う。LabVIEWは20年以上前、PCベースの計測器用として誕生した。当初は測定データを入力するだけだったが、出力もできるようになり、次第に組み込み機器用として使われるようになってきた。現在では計測よりも制御、組み込みのユーザーの方が多いほどだ。

 LabVIEWのメリットは3つある。まず、グラフィカルであることだ。設計でも試作でも実装でもグラフィカル開発だけで進む。技術者はプログラマではないからC言語でのプログラミングに習熟するよりも、いかに素早く試作できるかの方が重要だ。特に実証試験のために短い期間で開発しなければならないときや、市場に早く製品を投入しなければならないときには有利になる。もちろん、ハードウェア寄り、実装寄りの試作にもLabVIEWで対応できる。

 2番目にPCベースのシステムであるため、各種コントローラーや組み込み機器、FPGA、センサーなど既に6000種類以上の機器と容易に接続できることだ。どのような機器とつながるか予想が難しいスマートグリッドの開発に向いている。

 3番目は企業内の組織や技術者の壁を崩す役に立つということだ。通常は設計と試作、実装のそれぞれの段階では異なるツールを使い、組織や技術者の壁がある。LabVIEWであれば、1人の技術者が同じ開発ツールで3つとも実行できる。運用までも可能だ。

 今後は、クラウド(Microsoft Azure)を利用してさらに開発スピードを上げることを予定している。技術者はWebブラウザを前にして、グラフィカルツール「LabVIEW Web UI」を使うだけ、コンパイルはクラウド中で実行し、マイコンにプログラムを転送するときもインターネットを使う。ITでは当たり前になった開発スタイルを利用できる。現在は評価サイトで評価できる状態だ。

 メーカーの技術者が試作品を作るだけではなく、将来は家庭でもWebブラウザ上で電力メーターのプログラムをカスタマイズするといったことができるようになるだろう。ITの世界でメインフレームからのダウンサイジングが進み、Appleでデスクトップコンピューティングが可能になったように、電力も自分で計測して自分で見られるという広がりが生まれる可能性がある。

MONOist そのような動きをどのように支援しているのか。

早川氏 ブロックのLEGOを使った取り組みを考えている。LEGOにはロボットの試作に使えるモーターや、太陽電池、風力発電用のタービンなどミニチュアながら実際に動き、スマートグリッドに必要な部品が多数そろっている。

 LabVIEWを使ってこれらの部品を制御すれば、そのままHEMSが完成する(図2

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図2 LEGOを使ったスマートハウス LabVIEWを使って制御しているところ。制御用の入出力画面は写真右のノートPCに表示されている。写真左はリアルタイムコントローラー「NI cRIO-9022」。5つのモジュール(青い箱)を接続した。モジュールはそれぞれ、電圧入力、電流入力、配電盤コントロ−ル入出力、温度計測用の熱電対、通信ボードである。

 これは高校生がLabVIEWで作ったものだが、ミニチュアの家に付けた電力計から消費電力値などを受け取ってノートPCに表示している、太陽光パネルの発電量や、系統の電力価格を変えたときにいつ蓄電し、どう動かせば最もコスト負担が低くなるかといった実験を簡単に進めることができる。「LabVIEW GREEN Community for Student」として、ロボット制御や環境エンジニアリングなどを支援しており、震災を機に、ボランティア教育にも使いたいと考えている。

 LEGOとLabVIEWを使った社員教育プログラムの大量導入を決めた企業も既にある。子どもでも開発できるのなら、技術者のすそ野を広げるツールとしても使えるはずだ(図3)。

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図3 LabVIEWの応用例 電気自動車の制御にLabVIEWを利用した例。ゼットエムピー(ZMP)が開発した。開発期間を短縮し、設計、試作、実装のサイクルを早くすることができる。

 最後に復興支援向け助成制度として、環境エンジニアリング助成プログラムも立ち上げた。総額2億円を提供する。1ユーザー当たり200万円を上限として、開発ソフトウェア、開発ハードウェア、トレーニングを提供する。今年中に約100社を選定したいと考えている。2011年5月以降、支援対象企業がそれぞれに知恵を出し合って議論できるよう、専用サイトも立ち上げた。


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