中小製造業の「現地化が難しい理由」は間違いだらけ:変わりゆく中国の日系製造業(3)(2/3 ページ)
中小企業の海外進出・現地化が失敗する理由は資本力などではない。震災を契機に現地取引が増える一方で、現地化に悩む日系中小製造業は何を強みにしていくべき?
中小企業がITシステムを現地化していくには
生産の現地化や管理の強化が語られて久しい中国工場ですが、先進的なITシステムを導入している企業でも、中小企業の場合は生産ライン以外に要員を置くことは難しいのが現実です。工夫するとすれば、現業の生産管理業務とともに、ITによる運用を兼務できるような人材を置くことですが、中国ではいまだに製造業の管理業務に始めから高いリテラシーを持つ人材が応募してくることが少なく、兼務という意識も低い傾向があります。
そのような環境の中では、生産管理システムを手組みで作る、オフィスソフトで個人運用させるというような措置は工場立ち上げの当初は仕方ないとしても、いつまでもそのままというわけにはいきません。
ネットワークインフラの整った日本であればクラウドシステムの採用などというような選択もあると思いますが、中国の都市部以外では難しい面もあります。
では、どうすればよいのでしょうか? 筆者が勧めたいのが、パッケージソフトウェアのノンカスタマイズでの利用と現地のSI会社の利用です。
ソフトウェアに手を加えないことでおのずと標準化を実現でき、コストの安い現地のSI会社と契約することでITの間接費用を抑えることができます。
当社は、中国での大手日系製造業への当社製品の導入が一巡する中、サプライヤに相当する中小製造業向けに現地SI会社の育成に努めています。
予算と要員の足りない中小企業の方々に、できないことを強いるより、当社システムパッケージのデリバリの現地化を進め、別の観点から中小企業のITの現地化を支援していく戦略です(筆者注)。
筆者注:この方法も当社自体が現地法人を持ち、メーカーとして製品のデリバリの現地化を実現できているからこその施策です。片手間の生産スケジューラのメーカーや営業拠点のみを現地法人とするその他の日本のスケジューラメーカーには、まねのできない芸当だと自負しています。
上記の当社パートナーに当たる日本のSI会社の中国への進出状況を見ても、約半分の会社が中国進出までは計画しています。特に震災後は計画を進める企業が増え、当社上海オフィスにも現地調査として来社されるSI企業が増えています。しかし、いまだに「日本からのロールアウト案件のための営業拠点」という位置付けであることが多いようです。
中小製造業が現地化するためのノウハウの重要性
工場の立ち上げという観点からすると、用地の買収や製造装置の確保など、ハード面での準備は資金さえあれば比較的容易であることは想像に難くないと思います。しかし、当社のようなパッケージソフトウェア製品と同様に、ただ形だけを整えても生産活動は軌道に乗りません。人材の確保と育成といったサービス面での体制確立が不可欠ですが、ハードウェアとは違いこれらの充実には時間とノウハウが必要です。
日本式お説教のコンサルタント、中国では……
システム化以前の問題が多い中国工場では、われわれも多くの「生産管理コンサルタント」の方と仕事をしてきましたが、“アウェイ”の地で仕事を進めていく以上、日本と同様の叱り方のコンサルタントはことごとく失敗しているといっても過言ではありません。
現場で叱り付けて言うことを聞かせる方法では、中国人の現場担当はいっけん言うことを聞くようにふるまいますが、叱る人がいなくなればすぐに元に戻ってしまうのです。
筆者の自戒でもありますが、現地化には現地で現地の社員とともに目標達成のために汗をかくこと、また、その努力を継続することが重要です。
たとえ中小企業であっても――逆にそうであるからこそ、日本の経営者自身を、もしくは信頼のおける腹心を中国工場に長く置き、現地の方との信頼関係を構築した上で、権限を中国人に移管するといったステップが求められると思います。
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