原発事故から学ぶインタラクションギャップ:甚さんの「想定内だぜぃ!トラブルは」(3)(2/3 ページ)
今回はちょっと難しい匠のワザを伝授。トラブル三兄弟だけでは潜在トラブルを引き出せない場合に活躍するのがインタラクションギャップだ。
バラツキを理解する
それでは、図2を見ながら「バラツキ」を理解しましましょう。
福島第1原発には、1〜6号機が設置されています。そのうち、特に不具合を起こしているのは、1〜4号機です。なぜこのような事態になったのか、その原因を1〜4号機でくくり、よくない点や原因を追究します。実は、この考え方は基本形となりますが、あくまで初歩です。職人はちょっと異なります。
まずAとBで2つのグループに分類します。福島第一原発におけるAチームは大きな不具合が未発の5、6号機であり、Bチームは現在、大きな不具合を起こしている1〜4号機とします。いきなりよくない点や原因を探求するのではなく、AとBの差、つまり、「バラツキ」を徹底追究します。
一般的な探求法では、Aチーム(大きな不具合未発チーム)を切り捨ててしまうのに対し、バラツキの探求は、常にAチームも調査の対象として継続調査します。
次が、「匠の道具(2)」の神髄です。
- インタラクションギャップとは、複数以上の要因間にトラブルが潜在することを意味する。
- 引き出した瞬間、トラブルは「想定内」となる。
良君が言うように、少々理解が困難ですので、もう一度、図1の特性要因図を見ながら、理解しましょう。
「インタラクションギャップ」とは、それぞれの単語を辞書で調べると、以下のような説明がありました。
- インタラクション:interaction、複数の要因が互いに影響を及ぼし合うこと。相互に作用すること。
- ギャップ:gap、すき間や食い違いのこと。
洗濯用の洗剤とトイレ用洗剤には、その容器に「混ぜるな危険!」の表示がありますね。どちらも悪くないのに、混ぜると「塩素ガス」が発生して人命に関わります。これは、即、理解できる事例ですね。
さすがに富士山麓大学の院卒じゃねぇかい。浅い理解なら早い! そんじゃよぉ、図1の赤い斜線部を見てみろ!
ソフトウェア技術者を代表に、全ての技術者が悩むインタラクションギャップがそこにあります。これを……、
マンマシン(Man/Machine)インタフェース
と言います。
あまりにも有名なインタラクションギャップです。
だいぶ、すっきりしてきました。意外と理解は容易だったと思います。でも、甚さんがいつも言っているのは、「やさしいものほど訓練が必要である」と……。
全く、何度もうれしいこと言ってくれるじゃねぇかい。あん? そんじゃよぉ、過去の悲しいトラブルを分析しようじゃねぇかい。その前にテストするぞ!
えっ、また突然テストですか? 超カンタンですよ。「糖分」「塩分」「脂肪分」、ルンルン♪ ルンルン♪
フンガーッ! 余分三兄弟のことを聞いてんじゃねぇよっ!! オメェ、また酔っぱらっているのか? ザけるんじゃんねぇ!
ヒィィ! すみません……。
特性要因図は、「4Mで切る」……、「匠のワザ」では、これを推奨しているがよぉ、その「4M」を言ってみろ!
超カンタンですよ。4Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)をいいます。これを特性要因図の切り口にしています。
イッツ、パーフェクトゥ!(It’s perfect!) 最近、どうしたんだぁ。大震災は悲しいが、オメェら若造がやたら活性化したなぁ! オジンのオレサマとしては、超ウレシイってもんよ。
そうなんです。あの大災害で、「このままじゃ、いけない!」って、僕みたいなノーテンキな技術者も気が付いたんです。期待されているってことを!
ンー! イッツソー、ワンダホー! (It’s so wonderful!) そんじゃ、「インタラクションギャップ」を、事例でもって徹底理解しようぜぃ!
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