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日本は本当に「ロボット大国」なのか再検証「ロボット大国・日本」(1)(1/2 ページ)

「日本のロボット技術は世界一」……。しかし東日本大震災による原発事故で最初に投入されたのは米国製ロボットだった。日本は本当に「ロボット大国」なのだろうか?

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 1969年生まれの筆者にとって、「万博」と言えば2005年に開催された愛知万博(愛・地球博)のことである。その2年前には鉄腕アトムの設定上の“誕生日”もあったのだが、いま思えば、このあたりまでが「ロボットブーム」というもののピークだったのではないか。「ワールドレコーズ」というテレビ番組で、2足歩行ロボットによるバトルを見た記憶がある人もいると思うが、それもちょうどこのころだった。

ブームは過ぎ去った!?

 愛知万博では、実にさまざまなロボットが集められていた。警備ロボット、掃除ロボット、接客ロボットなどの実証実験が行われた「ロボットステーション」に加え、トヨタや三菱などは自らの企業パビリオンでも使用。特にトヨタは搭乗歩行型ロボット「i-foot」やパートナーロボットなどをショーのメインに据えるほどの力の入れようだった。また期間限定だったが「プロトタイプロボット展」では、2020年までの実用化を目指している65種類ものロボットが披露され、近い将来、ロボットと生活するという期待を持たせた。

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トヨタグループ館のショーで披露されたパートナーロボットによる楽器の演奏

 しかし実際には、「21世紀」という未来的な響きがする時代になって10年が過ぎても、ロボットは一向に生活に入り込んで来る気配がない。もちろん、製造業の現場では1980年代から本格的に産業用ロボットの導入が進んでおり、今やロボットなしでモノ作りはあり得ないのだが、それ以外の分野ではなかなか市場と呼べるほどのビジネスにまで発展していないのが現状だ。国内で累計20万台以上が売れた掃除ロボット「Roomba(ルンバ)」のように、ある程度の市場を築くことに成功した製品もあるが、これは例外的だろう。

 エンターテインメントやホビーも期待された分野の1つであったが、この現状は惨憺(さんたん)たるものだ。犬型ロボット「AIBO」や2足歩行ロボット「QRIO」を開発していたソニーは撤退。リアル・ドラえもんを2010年までに開発するとしていたバンダイも、2009年発売の「Myドラえもん」を最後に撤退。タカラトミーが2007年に発売した「i-SOBOT」は、17自由度の2足歩行ロボットとしては驚異的な低価格(約3万円)で注目を集めたが、結局1モデルだけで後継機は登場しなかった。

 近藤科学が2004年に組み立てキット「KHR-1」を発売し、誰でも本格的な2足歩行ロボットを作ることができるようになったものの、こちらもまだ「マニアの遊び」にしか見られていない。その後、京商から「マノイ」、HPIから「G-ROBOTS」といった製品も出てきたが、現在でも新製品を出し続けているのは、近藤科学、ヴイストン、姫路ソフトワークスなど数社にすぎない。ロボットは注目される割に、現実のビジネスとしてはなかなかうまくいかない。

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近藤科学の最新型ロボットキット「KHR-3HV」(実売価格は約12万円)

 ちなみに蛇足ながら、メディアも全く盛り上がらない。ロボット雑誌は出ては消え、Web媒体でもImpress Watchの「Robot Watch」が2009年末で休刊。ロボット系ライターとしては「冬の時代」をひしひしと感じているところだ。

 そんな中で、にわかにロボットが注目される事件が起こった。それは残念ながら未曾有の大惨事だった。

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