福島原発から学ぶ、トラブル三兄弟:甚さんの「想定内だぜぃ!トラブルは」(2)(1/3 ページ)
福島原発のトラブルにも、あの三兄弟が隠れていた……。開発のトラブルを減少させ開発効率を向上させる対策法も解説する。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
余分……いや、トラブル三兄弟について
「トラブル三兄弟」なんだけどよぉ、オメェもいい歳こいたから健康には気を付けろってもんよ。そんじゃここらで、生活習慣病の「余分三兄弟」を言ってみやがれ! 考えてねぇで、さっさと言え!
超カンタンですよ。「糖分」「塩分」「脂肪分」、ルンルン♪ ルンルン♪
図面も描けねぇ院卒がよぉ、どうして、そうすぐに答えられるかなぁ? でも、ていしたもんだ! そんじゃよぉ、今っから「トラブル三兄弟」を教えてやらぁなぁ!
一番上は、長男 【新規君】新規技術
新規君は、「新規技術」「新規設計」「新規生産地」など、「新規」がキーワードです。大震災で事故を起こした原子力発電所(原発)は、まさしく「新規なエネルギー源」といえましょう。そして、福島原発は、東京電力「初(=新規)」の原子力発電所です。また、その施工業者も「資源のないこの国で初めて(=新規)原子力発電所を完成した」とWebサイトで誇示しています。福島原発は、多くの新規君の集合体なのです。
キーワードは「新規」ですね。ここにトラブルが潜んでいるから、図面を出す前に、この部分を表(Excelなど)にリストアップすればいいのですね!
やけにさえているじゃねぇかい。オメェも震災の後は、変わったよなぁ。パワーツーザ、ピーポー♪
間に挟まれ、次男【トレードオフ君】トレードオフ
世界の異端児である日本の携帯電話のように、「何でもあり!」が大好きな日本人技術者の弱点が、「トレードオフ」という設計概念の脆弱(ぜいじゃく)性です。「設計思想とその優先順位」が問われる部分です。全ての業界で、「安全性」と「コスト」のトレードオフが議論になります。今回の大震災で原発をはじめ多くの工業分野で、今後も、「安全性」と「コスト」のトレードオフが議論となるでしょう。
かつて、「設計思想とその優先順位」「トレードオフ」は、理解に苦しみました。でも昨日、「甚さんの設計分析大特訓(6)」と「同(7)」で完璧に復習しましたよ。
復習? そうだ、その意気だ! さすが、院卒だ。次男のキーワードは「トレードオフ」。ここにトラブルが潜んでいるだぜぃ!実は、日本の自動車メーカーにこの概念が欠落しているんだよ。
だから、日本の自動車メーカーのA社、B社、家電メーカーのC社、D社、E社、OA機器のF社、銀行のG……、特定の企業だけが社告・リコールを何度も繰り返しているのですね。
一番下は、三男【変更君】××(ペケペケ)変更
兄弟の中で、最も重大な被害を与えるのが「変更君」です。記憶に新しいガス湯沸かし器の一酸化炭素中毒事件も、薄型への設計変更でした。設計変更や材料変更、仕入先変更、生産地変更のように「変更」がキーワードになります。
福島原発で最も危険といわれている3号機は、濃縮ウランを燃料とする軽水炉型からMOX(プルトニウムとウランの混合酸化物)を燃料とするプルサーマル発電型に変更を始めましたが、その矢先の大震災でした。
三兄弟の中で、最も注力するのが、「変更君」だ。キーワードは、もちろん「変更」だ。ここに重大トラブルが潜在しているんだよぉ。図面を出す前に、この部分をリストアップしろ! これが、職人だ。これが、「匠のワザ(1)」ってぇもんよ!
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