IEにおける「品質管理」の考え方とは:実践! IE:現場視点の品質管理(1)(2/3 ページ)
生産工程で考えるべき「品質」の基本とは? TQCの歴史的経緯などを踏まえながらモノづくりの現場が心得るべき事柄を順を追って解説します。
1. 品質管理を行わなければならないのは何のため?
1.1 企業の存続を通して、社会の進歩と繁栄に貢献していくために品質管理を行う
先にもお話ししましたが、悪い品質の製品を製造していて、果して利益を上げていけるのでしようか。「図1 品質の差と顧客の行動」は、私たちが日常生活の行動として品質の差をどのように受けとめているかまとめたものです。
図からは私たちが製品を作り、顧客に満足を与えていない限りは、利益を上げて企業を維持していくことができないということが分かります。この図の中で、“会社”を自分の職場に置き換えた場合もまったく同じことがいえます。直接製品を買ってくれる人たちだけでなく、製造工程では、次工程もある種の顧客と考えて作業しなくてはなりません。
次に、品質と身近な私たちの行動の関係を考えてみます。
売り手と買い手の間は、品質が問題になることは当然のことですが、品質が良くても値段が高いと顧客は満足しないでしょう。私たちがモノづくりを通して、どのようにすべきかを考えると、製品の品質を高め、安く売ることが必要です。こうして、利益を確保していくことが「品質管理」の目的であるといえます。
狭義の品質は、一般的には「その製品またはサービスがその使用目的を満足させるために備えている特性」と定義されています。この「特性」は、「その製品だけが備えている性質」であり、いい換えれば「その製品のみが果し得る機能や働き、または性能」といえます。この品質の考え方は、製造と検査を重点に置いた、規格に対する合致度として考えられていました。
しかし、最近では、顧客の要求に対する合致度も含めて品質として捉えることが重要となってきています。このことからも、企業は技術を売っているのではなく、「品質」を売っていると定義しても過言ではありません。すなわち、顧客が品物を買うということは、その“働き”を買っているのであって、私たちは、設計から製造の中でその“働き”を作り込んでいくために「技術」があることを認識しなければなりません。
従って、顧客の立場から見た「良い品質」とは、「機能や働き」だけでは満足されなくて、必要な使用期間中にその機能を失うことなく使用できるものでなくてはなりません。これは、その製品の寿命を指しています。従って、品質の定義は、「品質とは、その製品が備えている特性が、ある定められた期間、その使用目的を果たし得る“働き”」と解釈できます。
また、一方で、品質が良ければ価格がいくら高くてもいいわけではありません。品物は、適正な価格でなければ顧客に満足されないことは先にも述べましたが、品質は価格を考えずには論じることはできません。このような一般的な品質の考え方に基づく所定の品質とは、顧客の要求する品質(契約仕様書によるものはその品質)に適合する品質であることのみならず、
- 自社製品として、顧客の要求品質を具現化できる技術を持っていること(性能、寿命、デザイン、取り扱い、保守など)
- 顧客の購入目的に合致したものであること
- 市場性と社会的通念とを考えて十分な水準にあること
が必要です。
以上は、私たちが顧客に届ける製品の品質について説明したものですが、前述の通り、工場の中にも“顧客”という概念があります。例えば、部品などの機械加工部門の顧客は、サブ組品などの組立を行う部品組立部門であり、部品組立部門の顧客は、総組立部門というような関係が成り立ちます。また、生産統制(管理)部門にとっては、調達した部品類の供給を受ける製造部門が顧客であり、その納期・数量の正確さや関連する業務品質は、生産統制(管理)部門の仕事の重要な品質であるということがいえます。
前工程で発生したミスや課題に対しては、後工程は厳しくその改善に迫り、前工程は、それを真摯(しんし)に受け止めて迅速に対応していくという企業(職場)文化を徹底して醸成していかなければなりません。もちろん、前工程が後工程に対して何らかの指摘をし、変更させるようなことは絶対にあってはならないのです。なぜならば、“後工程はお客さま”だからです。とりわけ、業務品質の問題は部門をまたぐ横断的な業務プロセスに問題がある場合が多く、プロセス全体の品質を良くしていくためには、たとえ小さな問題でも徹底的につぶしていかなけれ改善されていきません。
従って、先に述べたようないろいろな製品の機能または性能のレベル(水準)という狭い意味の品質ではなく、品物に限らずに「品質」は企業内の全ての業務(事象)の“(品)質(Quality)”であると考えていくべきです。モノを作っている工場はもちろんのことですが、デパートやレストラン、ホテル、病院など、その他のサービスを売っている企業や店舗でも品質管理が行われているわけがここにあります。
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