LIN2.0/LIN2.1の新仕様:車載ネットワーク「LIN」入門(3)(2/2 ページ)
今回はLIN2.0/LIN2.1で追加された「ステータスマネジメント」「診断」「ノードコンフィグレーションと識別」「ノード機能ファイル」を解説する!!
3.ノードコンフィグレーションと識別
ノードコンフィグレーションと識別は、スレーブノードを効率的に再利用するためのサービスです。
LIN記述ファイルには、LINネットワークに必要な情報が定義されており、送受信するノード、フレームID、シグナルなど、スレーブノード固有の情報も含まれています。つまり、スレーブノード固有の情報は、LINネットワーク固有の情報として定義されます。
また、LIN記述ファイルの定義は通信によって動的に変更できません。そのため、あるスレーブノードを別のLINネットワークで使用する場合、フレームIDの重複などが発生する可能性があるため容易に再利用できません(図6)。
図6 レスポンスの衝突(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)
※車両A、Bで使用している2つのスレーブノードを車両Cで再利用した場合、フレームID0x10が重複しているため、レスポンスが衝突する。フレームIDは車両A、Bの各LIN記述ファイルに定義されているため、車両CのLIN記述ファイルの変更では衝突を回避できない。そのため、再利用するスレーブノードのアプリケーションなどを変更する必要がある
「スレーブノードの効率的な再利用」に対応するため、LIN2.xでは以下の仕様が追加されました。
- スレーブノード固有の情報を定義する「ノード機能ファイル(NCF)」
- スレーブノードを通信によって再設定する「ノードコンフィグレーションと識別」
ノード機能ファイル(NCF)
ノード機能ファイル(NCF:Node Capability File)は、1スレーブノードの固有情報を定義する標準形式で、LIN記述ファイルと同様、LINの仕様書に規定されています。ノード機能ファイルには、ネットワークに依存しない情報を定義します。
ノード機能ファイルには、スレーブノードが送受信するフレームID、シグナルなどのほかにスレーブノードを特定するためのノードアドレス(NAD)も定義します。ただし、ノード機能ファイルに定義されているノードアドレスが、ほかのスレーブノードと重複している可能性もあるため、ノード機能ファイルにはスレーブノードごとに必ず重複しない「製品識別番号」と呼ばれる下記の3つの値を定義します。
ノード機能ファイルの情報は、システム定義ツールを使用してLIN記述ファイルに結合されます。これにより、スレーブノード固有の情報を簡単にLIN記述ファイルに定義できます(図8)。
図8 ノード機能ファイルの情報(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)
※LIN2.1では、システム定義ツールを「LINクラスタデザインツール」、システムジェネレータを「LINクラスタジェネレータ」と呼ぶ。クラスタとはLINバスとすべてのノードを指す
ノードコンフィグレーションと識別のサービス
ノード機能ファイルは、1スレーブノードに対する定義となるため、ほかのスレーブノードのノードアドレスやフレームIDと重複する可能性があります。
このスレーブノード間の設定の重複などを解決するために追加された仕様がノードコンフィグレーションと識別のサービスです。
ノードコンフィグレーションと識別は、トランスポートプロトコルのシングルフレームを使用し、スレーブノードを1つずつ設定します。ノードコンフィグレーションと識別で定義されているサービス(SID)は「0xB0」から「0xB7」です。
4.異なるプロトコルバージョンのノードが混在した場合の動作
最後に、LINネットワーク内にLINプロトコルバージョンが異なるノードが混在した場合の動作について説明します。
LINネットワークでは、マスターノードが通信を制御するため、マスターノードのプロトコルバージョンにより使用できるスレーブノードのプロトコルバージョンが決まります。
LINは、主にドアミラーやパワーシートなどのボディ制御に使用されるシンプルかつ安価な車載向けサブネットワークシステムとして策定されました。今後も快適装備品の増加や、さらなるコスト削減の取り組みに伴い、LINが使われるケースが多くなると予想されます。また、複雑化する制御や通信を実現し、効率の良い開発を行うために、LIN2.0/2.1で追加された仕様を採用するノードも増加していくと考えられます。
本連載で説明したLINの基礎知識が、皆さんのLINプロトコルの理解と導入の一助となれば幸いです。(連載完)
http://www.vector-japan.co.jp/
http://www.vector-japan.co.jp/vj_lin_solutions_jp.html
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