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世界で勝てるのか!? 日本の鉄道インフラ技術知財コンサルタントが教える業界事情(1)(4/4 ページ)

日本企業と世界トップ企業との違いがパテント調査で浮かび上がる。第1回は輸出競争が激化する鉄道インフラをリサーチ!

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全世界でパテントポートフォリオを形成するビッグ3と欧米メーカー

 再び図2から、世界の鉄道建設プロジェクトで存在感を示しているビッグ3および欧米メーカー(GE、クノール・ブレムゼ、WABTEC)の動向を見てみましょう。

 ビッグ3および欧米メーカーは自国での発行件数が多くなる傾向にありますが(例えばシーメンスは欧州での発行件数が最大)、全世界へ満遍なく特許出願を行っていることが分かります。GEやWABTECは、まだ発行件数規模が小さなインドやブラジルへもビッグ3を上回る特許を出願しています。

 前述のように、自国以外で事業展開を図る場合、自社技術を法的に保護するワールドワイドなパテントポートフォリオを保有していることは最低限の条件となりますので、欧米メーカーは10年以上前から中国・インド・ブラジルなどの新興マーケットでの事業展開を狙っていたことが分かります。

 一方、日本企業を見ると自国・日本では大量の特許出願を行っていますが、日立を除くほかのメーカーは海外への特許出願が極めて低調です。国内マーケットを重視するあまり、海外での事業展開を視野に入れた知財戦略が欠如していたといえるでしょう。

 鉄道建設プロジェクト受注には、知財力に裏付けされた技術力だけではなく、特許権・実用新案権など可視化された知的財産権として現れてこない鉄道の運行管理ノウハウの有無、国同士の政治などさまざまな要因が絡んできます。

 図2で示したのは世界の主要な鉄道関連メーカーの特許権・実用新案権の件数を比較した1つの側面にすぎません。しかし、今後海外での事業展開を積極的に行っていく際に「鉄道大国・日本」を自負するのであれば、それを全世界に示す知財ポートフォリオ形成が求められるのではないでしょうか。

分析仕様・条件

データベース PatBase
分析条件 IPC(国際特許分類)でB61(鉄道)を含む特許・実用新案
企業名について グループ企業も含めて検索を実施(例:日立製作所はHITACHIで検索)

アルストムはALSTOMまたはALSTHOMで検索

ボンバルディアにはABB・ダイムラー(ダイムラー・クライスラー)およびアドランツ出願の特許も含めている(BOMBARDIER OR "DAIMLER CHRYSLER"* OR DAIMLERCHRYSLER* OR "ABB DAIMLER"* OR ADTRANZで検索)

WABTECはウェスチングハウス・WABCO出願の特許を含めている(WESTINGHOUSE OR WABTEC OR WABCOで検索)

 本稿を執筆する際に使用したデータベースや調査方法を下記に示しておきます。

※特許データベースの利用方法などは、連載「自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識」で紹介しています。こちらも参照ください。


筆者紹介

ランドンIP合同会社 野崎篤志(のざき あつし)

1977年新潟県生まれ。
2002年慶応義塾大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻修了(工学修士)。
2010年金沢工業大学院 工学研究科 ビジネスアーキテクト専攻修了(経営情報修士)。
日本技術貿易株式会社・IP総研を経て、現在ランドンIP合同会社シニアディレクター(日本事業統括部長)。

知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、Webサイトe-Patent Map.nete-Patent Search.netやメールマガジン「特許電子図書館を使った特許検索のコツ」を運営・発行している。
著書に『EXCELを用いたパテントマップ作成・活用ノウハウ』(技術情報協会)、『知的財産戦略教本』(部分執筆、R&Dプランニング)、『欧州特許の調べ方』(編著、情報科学技術協会)、『経営戦略の三位一体を実現するための特許情報分析とパテントマップ作成入門』(発明協会)がある。



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